最近、祖母の死に目を看取った。

もう随分年をとっていたのだが、これがまた漫画に出てくるようなひどい意地悪婆さんで、突然勝手に家に住むと言い出し、特に父とは仲が悪く毎日言い争っていたみたいだ。

俺は早くに実家を出て東京で暮らしていたので、あまり詳しい事は知らないのだが。


これだけ執念深い性格ならさぞ長生きするだろうと父はぼやいていたが、突然容態が悪くなり、長い期間入院する事になった。

祖母が入院した病院は、実家から遠く離れた場所にある有名な病院だったのだが、医者も手の打ち様が無く、親戚を集めて話し合った結果、安楽死させてあげようという結論に至った。


最後の日、病室のベッドに力無く横たわる祖母の姿からは、意地悪な事ばかりしていたかつての元気は欠片も無かった。

祖母が息を引き取る寸前、何か言おうとしたので、父が顔を近づけて、最後の言葉を聞こうとした。

声はほとんど出ていなかったが、微かに聞こえた音と口の動きから、

「秀一、遠いとこ来てくれて……行って……さようなら」

と言ってたのだろうと父は言っていた。(秀一は父の名前)

『行って』と言ったのは、一番嫌っていた父に、自分の死ぬとこなど見られたくなかったのだろう。


しかし、そんな一番嫌っていた父を最後に労い、ほんとは心の清らかな人だったんだと親戚はみんな泣いていた。




「秀一、遠いとこ来てくれて……行って……さようなら」

ほとんど声が出ておらず、かすかに聞こえた音と口の動きから、祖母の発言はこうであった、と思われた。

しかし、母音に注目すると…


秀一、遠いとこ来てくれて 行って さようなら



しゅういち とおい とこ きて くれて いって さようなら



うういい  おおい おお いえ うええ いっえ あおうああ



くるしい  のろい ころ して つれて いって やろうかな



苦しい 呪い殺して連れて 行って やろうかな


はっきりと聞こえなかったことから、親戚たちには良い意味に聞こえたようだが、実際はこんなに恐ろしいことを言っていたのだ…