行方不明者はいません。


誰か死んだわけでもないです。


錯覚だったのかもしれません。


ただあれ以来夜は

あまり出歩かないようにしています。


夜はカーテンの隙間を直視できません。


夜はドアをあけられません。


中学生の頃、

反抗期真っ盛りで夜に家を出て

友達とこっそりタバコをすったり

エロ話したりしていた。


田舎町なので

夜遊びもマンネリ化して

退屈になってきた頃


Tという友達が

この近くに心霊スポットがあると言い出した。


又聞きで詳細はわからないが

それはよくある空き家で

昔そこで人が死んだだの入ると気が狂うだの

ありがちな噂話だった。


Tは正確な場所は知らなかったのだが

Fという友達がその空き家の場所を知っていたので

そこに探検に行くことになった。


そこはよくある平屋の一戸建てで、

住宅街のど真ん中なのに

夜というだけでなによりも怖かった。


家の前に街灯がともっていて驚くほど安心した。


Tが裏口が開いているのを見つけたので

お宝とかあるかな、とわざと明るく言いながら中に入った。


埃っぽい板張りの廊下。風呂場。トイレ。


微妙に残る生活感が不気味で

みんな口数が少なくなった。


俺は奥の和室の前で立ち止まった。


ぼろぼろの障子が閉じていて

中は見えなかったけれど。

ストーブから熱気がでるように

障子からは恐怖が滲みでている気がした。


背骨がケバ立ったような、

骨が錆びついたような。

みんな和室の前に集まってきたけど

誰も一言もしゃべらない。


障子を開けるのが怖くて、

でも目を離すのも怖くてみんな動かなかった。


「あああぁぁぁぁっ!!」


俺の叫び声でみんなわれに帰り

一目散に駆け出した。


今までの静かさが嘘のように

みんな大声で叫びながらその家を飛び出し

そのままそれぞれ自分の家に逃げ帰った。


次の日に学校で

空き家に行ったメンバーが集まった。


昨晩の出来事のばかばかしさに

みんな笑ってた。


叫び声を上げた俺はチキン扱いされた。


俺は叫んだ理由を黙ってた。


言ってもどうせ誰も信じないだろう。


みんなは気付かなかったみたいだけど

あの障子の無数の破れ目一つ一つから

目がこっちを覗いてたんだ。


その日から夜、いろんな隙間から

あの目がのぞいているような気がして仕方ない。