自動車教習所の事務をしています。


倉庫の整理をしているとき、

奥のほうに証明写真用のカメラがあることに気付きました。


壊れているのか?とも思いましたが

なんとなく気になって先輩に聞いてみたのです。


すると


「壊れてはいないが、あんまり触らないほうがよい」


と言われました。


さらに食い下がって聞くと渋々答えてくれました。


そのカメラは教習所が出来た

当初からあるものなのだといいます。


どんなにピントを合わせても

どこかぼやけた写真しか撮れなかったそうですが

一向に原因がわからなかったことと、

使用出来ないほどではなかったことから

初めのうちは気にせず使っていたのだそうです。


そのうち、あの教習所で免許を取ると事故に起こす。


という噂が流れ始めました。


根も葉も無い噂、こちら側に非はない。


とその噂を無視していたのですが、

比例するように写真に対する苦情が増え始め、

ある日一人の男がやってきました。


免許証をカウンターに叩きつけてこう怒鳴ったのです。


「この写真のせいで俺は左手複雑骨折だッッ!どうしてくれるッ!」


免許証の写真はやはりぼやけていましたが、その左腕。


その部分はぼやけている――というよりも歪んでいたそうです。


その後すぐにカメラを入れ替え、噂も収まったのですが

そのカメラは捨てるのも気持ちが悪いので

倉庫の奥にああして置いてあるのだそうです。