ワンルームマンションで一人暮らししてたとき。

夜中ビデオ見てたら、飼っていたチワワが突然火が点いたように吠えだした。

シャワールームに向かって。


何だか恐くなって、音を立てずにソォーっとシャワールームの扉を開けた。

チワワは、すかさずシャワールームに入り、吠え続けた。


扉の隙間からシャワールームを覗いたが別に何事も無かったので、チワワを抱き上げ、扉を閉めようとしたとき、何か違和感を感じた。


ゆっくりとシャワールームの鏡を見ると鏡に写る浴槽の中から、ずぶ濡れの女が鼻から上だけを出し、こちらを見ていた。


ドキッとして浴槽を見たら何もいなかった。


慌てて扉を閉めたが、チワワは吠え続けていた。


格安物件だった訳が解った気がする。


語り手は何度も「シャワールーム」という言葉を使っている。
「風呂場」や「バスルーム」ではなく「シャワールーム」。

つまり、このマンションに設置されているのは浴槽のないシャワーのみの部屋。

「ずぶ濡れの女が鼻から上だけを出し」ていたら、実際はかなり怖いが、語り手の違和感はここではない。

あるはずのない浴槽が鏡に映っていたことだ。