俺がそのアパートに引っ越したのは、

五月のゴールデンウィークの初めの頃だった。


理由は簡単なもんで、

親の離婚の為の準備別居だ。


俺は親父が嫌いなんで母親に

(金溜まるまで仕事しつつ、パラサイト)

着いていったのだ。


まぁここまではよくある話、

続きがあまりにも特殊なのだ。


俺も実体験して

初めて信じるようになったのだが、

霊視ってのは本当にある。


まぁ、俺の場合はもうちょい特殊なのだが。


それはさておき―――


実の弟は本当に「視える」人間らしい。


それに助けられた俺が言うんだから間違いない。


まぁ弟が「視える」人間とだけ覚えておいてくれ。


さっさと、アパートの話に戻ろう。


アパートは築10年2DK、

家賃11万というなんの変哲もないペット可

(本来不可だが、大家がOKって言った)だった。


1階には大家の親、2階に俺、

3階には大家が住んでいる外見も内面も

なんら問題ない感じのアパート。


異変に気付いたのは

それから2日後だった。


そのころから今の会社でアルバイトを始めて、

その日の帰りは終電。


時刻は0時30分を少し回ったとこだった。


着替えて飲み物を飲もうと

冷蔵庫に手を掛けた時、


ガタガタガタ―――!!


部屋のガラス戸が大きな音をたてた。


ガラス戸自体、古い物だし、

素人がやったみたいにボンドで固定されてる。


少し驚いたものの、

あまり気には止めなかった。


そのアパートの近くに線路があり、

電車が通る度に同じような音を立てていたからだ。


時計を見てみると、

時刻は0時40分だった。


次の日、また揺れる。


その次の日も。


毎日決まって0時40分に揺れる。


まぁ気に止めてはいなかった。


ある日、不意に弟が、


「休みでしょ?

○○くん(俺の友人)とか呼んで来て飲んだら?

一人で夜いない方がいいよー」


いつもなら五月蝿くて寝れないから

家飲みはすんなって怒るはずなのに。


ちょっと違和感を覚えつつ、

友人を呼んだ。


久々の再開&引越し祝いで酒が進む。


時刻は確か0時10分ぐらい。


縁もたけなわ、

そろそろ友人らが帰る時刻が近づいてきた。


俺「まだ40分くらいまで大丈夫だろ?」


友人「は?何いってんの?

終電は0時28分だぜ、ここ」


俺「え?」


送るついでに終電を確認する。


確かに0時28分、だ。


駅員に確認しても

0時40分に電車が通ることはないらしい。


ならなぜガラス戸は決まって

「0時40分」に揺れるのだろう?


疑問も解けないまま、

やはり「0時40分」にガラス戸は揺れた。


次の日、弟に言われた一言、


「今日、俺も母さんもいないけど……

一人で家にいちゃいけないよ。

少なくとも0時40分は」


今でもその一言を忘れることは出来ない。


もしちゃんと言うことを聞いていれば、

今みたいな現状にならなくてよかったんじゃないかと思う。


もちろん俺はその注意を聞き入れなかった。


しばらく暇がなかったのもあり、

やりかけのゲームを一気にプレイ。


時刻は気付けば0時40分になっていた。


ガタガタガタ―――!!

ガタガタガタ―――!!

ガタガタガタ―――!!


明らかにいつもよりガラス戸が大きく揺れる。


びっくりした俺が振り返ると【それ】はいた。


口から血を吐いて苦しんでいる男が。


ガラス戸を必死に叩いていた。


ガタガタガタ―――!!

ガタガタガタ―――!!

ガタガタガタ―――!!


恐くてしっかりと凝視出来ない。


【それ】と目があったと思ったら、

それは俺の方に手を伸ばして消えていった。


その後、どうなったのかよく覚えていない。


俺を見つけた弟と母親は

放心状態でなにかを呟いていたという。


夜は恐い。


そんな思いをしつつ、

不意に大家から


「ペット飼ってるなら出ていけ」


と言われる。


自分で認めたはずなのに、

それを契約不履行だと申し立ててきたのだ。


引越しってから一ヶ月もしない間に

また引っ越すことになった。


そして引っ越す直前、

裁判を起こすために集めていた資料に

とんでもないことが書かれていた。


数ヶ月ほど前に、大家の夫が変死していた。


それも夜中、口から血を吐いて倒れていたらしい。


近所の人の話だと

よく夫婦ケンカが耐えなかったらしい。


しかも、

このアパートの一階には夫の両親じゃなくて、

現大家の親が住んでいる。


土地は夫の物らしいし、

遺産相続を争ってるとか。


今ではその家に住んでいないが、

その後色々お祓いやらして、

我が家にまつわることが見えてきたのだが、

聞きたい奴がいたら書くとするか。