俺が高校の頃、修学旅行先で宿泊したホテルの話だ。

修学旅行先は、言わずと知れる、第二次世界大戦で本土唯一の陸戦が行われた地、沖縄。

修学旅行としては定番の、平和記念公園やひめゆりの搭を周り、日も落ちた頃、宿泊先となるホテルに辿りついた。

ホテルの概観は近代的で、修学旅行の宿にしては随分と豪華だと感じた。

食事を終えた頃だったと思う。

急に体のダルさを感じ、医務担当の教師の部屋に行き体温を計らせてもらった。

結果、俺は38℃の熱を出していた。

昼間の団体行動の時には何も前兆は無かったというのに、何故いきなり?

と疑問を感じながらも、教師から解熱薬をもらい、早々に部屋へと引き上げた。

同室の友人はまだ外で話をしているらしく、俺一人、部屋のベッドで横になって、ぼうっと窓の外を見ていた。

窓はカーテンが閉められ、外灯の明かりに浮かび上がった、ベランダの格子の影だけがくっきりと映っていた。

それからどのくらい経ったかは良く覚えていないが、不意に、ベランダに人影が現れた。

外灯に映し出された人影は、ベランダの端から現れ、端へとゆっくり歩いて行った。

誰かベランダづたいに移動しているんだろう。

ぼやっとした頭でそう思っていると、またもやカーテンに人影が現れた。

今度は複数人だ。

確か2~3人だったと思うが、またベランダの端から現れ、端へと移動していなくなった。

何かおかしい。

ベランダに人影が現れても、足音は愚か、一切音が聞えないのだ。

さらに俺の見ている前で、何度と無くベランダを音も無く人影が移動して行く。

しばらくその光景を眺めていたが、いつの間にか寝てしまっていたようだ。

熱のせいであんな幻覚を見たのかどうかはわからないが、

翌朝には体調も良くなり、気になったベランダの外を確認すると・・・

とてもではないが、ベランダづたいに移動するのは無理だ。

隣のベランダとの距離を考えても、トップアスリートでも無い限り、ベランダ間を行き来する事はまず不可能だった。

しかも、宿泊していた部屋は角部屋で、昨夜人影が現れた方向は何も無い空中なのだ。

いったい俺は何を見たのか、熱による幻覚だったのか・・・

不思議な体験だった。