長距離トラックの運ちゃん

(名前をAとしておく)から聞いた話。


真夜中の峠道。


・・・普段からよく通る道だったそうだ。


その道の途中のトンネルに差し掛かった時、

Aはある異変に気付いた。


いつものトンネルの隣にもう一つ、

同じ造り、同じ大きさの、謎のトンネルがあった。


昼夜問わず最低でも半月に一度は通ってる道だから、

新たに開通したトンネルなら、

工事の時点で気付いてるはず。


しかしこれまでにその様子もなく、

まるで鏡に映したかのように

そのトンネルは突然、そこにあった。


Aは霊感の類などまるでない男だが、

この時は「入っちゃいけない」と直感したそうだ。


トンネルの出入り口付近の、

パーキング?(広くなってて公衆電話とかある所)に車を停めた。


トンネルを越えないと

今来た峠道を戻らなきゃならないし、

かなりの遠回りになる。


気味が悪いが思い切って突っ切ってしまうべきか、

遠回り覚悟で引き返すべきか、

Aはそのパーキングでしばらく悩んだらしい。


そうしていると、

自分が今来た道を別のトラックが登ってきた。


そのトラックの運転手(Bとしておく)も異変に気付いたらしく、

同じようにパーキングへ車を入れてきた。


互いの運転席が隣り合うように停車して、

窓を開けて話したらしい。


「長年運転手やってると、

妙な事もいくつか経験するけどよ、

こんなのは初めてだ。

悪いことは言わねぇ、引き返したほうがいい」


とB。


見るからに年上でベテランのBの意見にAは従い、

引き返すことにした。


車の向きがすでに戻り方向を向いていたBが

先にパーキングを出て、Aがそれに続く。


Aがパーキングを出て走り出した直後、

一台の乗用車とすれ違った。


その乗用車はトンネルに向かっていくわけで、

Aはその車がどっちのトンネルに入るのか気になって、

ミラーでその車を追った。


ミラーの中、

二つのトンネルの明かりと

乗用車のテールランプが見える。

(左右どっちのトンネルだったかはAからは聞かなかったが)


そして、乗用車がトンネルに入った。


乗用車がトンネルに入る、その瞬間、

Aには無線のノイズのような耳鳴りが聞こえたそうだ。


思わず体がビクっとするような音量で。


ミラーの中、

乗用車は吸い込まれるようにトンネルに入って行き・・・

直後、烈しく爆発した。


正確には、

乗用車の入った方のトンネル全体が

マグマのように真っ赤に燃えた(ように見えた)のだという。


慌てて車を停めるA。


Bも異変に気付き、車を停めた。


彼らのトラックには消火器が積んであったし、

通報するにはさっきのパーキングの公衆電話が一番近い(当時携帯はない)ので、

またトンネル方向へ引き返す。

(Uターンできないのでバックで)


しかし、

あのトンネルに近づくにつれ、

また異変に気付く。


・・・ない。


さっきは二つあったはずのトンネルが

・・・・一つしか・・・ない。


トンネルの入り口まで行っても、

あの乗用車の影も形もない。


不気味に静まり返ったトンネルが、

何事もなかったかのように

ぽっかりと口を開けているだけだった。


そのトンネルを通る気にはならず、

結局、二人は引き返して遠回りした。


後日、運ちゃん仲間にその話をしたのだが、

誰も似たような経験をした人はいなかったそうだ。


その峠自体、

いわく付きとかでも何でもなく、

日中はそこそこ交通量の多い場所らしい。


その後も同じような時間にあのトンネルを通っても

(そこ通らないと仕事にならないらしく)、

またトンネルが二つ・・・って事は無かったと。


で、数ヵ月後に

Aは高速のSAでたまたまBと再会し、

あの時の話になった。


話を聞くと、

Bもあの無線のノイズのような耳鳴りを聞き、

直後、真っ赤な光を見たらしい。


「まぁ、今となっちゃ何だったのか解らねえけどよ、

あのトンネルはこの世とは別の場所に繋がってたんだろうよ。

おめぇも見ただろ?

あの真っ赤な光。

ありゃまるで・・・地獄みてぇだったなぁ。

俺はな、あのトンネルも、消えたあの車も、

この世のもんじゃねぇと思う事にしたぜ。

だってよ、あの車がもし人間だったとしたら・・・・

どうなったかなんて考えたくもねぇ・・・

俺たち二人、まとめて狸にでも化かされたんだよ。

そういうことにしようや、なぁ(笑)」


そう言ってBが笑うので、

Aもそういう事にしようと決めたんだと。