俺が小6の頃まで住んでいた東京下町のマンション、空襲の跡地で地縛霊が 

そっちこっちで見かけられると、一部の住民のあいだで噂されていた。

以下、俺が小2の頃の実話。説明がくどかったらスマソ。 


親父と風呂に入って、上がったら足拭きマットのところに飼い犬が寝ていた。 


犬は父のことが大好きで、父の入浴中も近くにいたがることがよくあるのだ。 


風呂場の前は洗面所なのだが、そこに入るには引き戸を開けなくてはならない。 


そのとき引き戸は開いていて、犬が勝手に開けられる重さではなかったから、 

ああ、母が外から開けてやったんだろうと、当然のように考えた。

もしくはただ単に親父か俺が閉め忘れたんだろうと。 

ところが母の言葉を聞いて驚いた。 
 

 「ねえ、洗面所の引き戸、開けてやったの、あんたたち?」 


親父と俺が風呂に入っている最中、犬が入りたそうに洗面所の前で座っていたのだという。

母は面倒臭かったので放置していたが、
やがて引き戸の内側から人間の手が伸びてきて、開けてやったのだという。

犬は喜んで入っていった。                    


 「いや。俺ら、1度も途中で風呂から出たりしてないよ」 


父の言葉に母は納得し、そして気味悪そうに付け加えた。 


 「そういえばあの手、やけに高い位置から出てたのよ。色もなんか青白くて」 


父は神妙に頷きながら、落ち着いた口調で言った。 


 「風呂入ってるとき、洗面所に何かいる気配はしてたけどな」