私が学生の時、

新聞配達のバイトをしていた時の出来事です。


当時配達を始めたばかりの私は

先輩について順路を覚えるのが主な仕事で、

バイクに乗って200軒程廻るのですが、

その内の1軒に古い神社がありました。


その神社は相当古いらしく、

建物自体はぼろぼろでその上そこへ覆い被さるように

大人が4~5人手を回しても届かない程太い幹の大木が

うっそうと繁っていました。


正確には神社の脇にある住職さんのお宅へ届けるのですが、

私は不気味な雰囲気のあるその神社がとても嫌いでした。


ある日、大体順路を覚えた私は

先輩から少し距離をおいて廻る事になりました。


時間は午前3時位で辺りは真っ暗、

バイクのヘッドライトだけが頼りです。


先輩から10m程の距離をあけてついて行った私ですが、

よりによってあの神社の付近で先輩を見失ってしまいました。


「○○さ~ん」


と声をかけても全然返事が返ってきません。


おいおい、こんなところで一人きりにされたら洒落にならないって、

と焦りましたが、とりあえずここから一番近い神社に行ってみようと思いました。


神社に着くといつのまにか月が出ていて、

更に街灯が数本立っていたのでいくらか周りの様子がわかります。


ふと、あの大木の陰に先輩が着ていた

白いジャケットが落ちているのに気がつきました。


なんだあ、配達中に暑くなって脱いで

一休みしてるのかなと大木の後ろに回って見ました。


そこには誰もいませんでした。


まったくジャケットこんな所に放り出してどこ行っちゃったんだか

と拾い上げて何気なく木の裏側を見ると、

そこにはなんと、木の幹が見えない程

びっしりとわら人形が打ちつけてありました・・・


「うわ~!!!!!!」


と叫んで隣の住職さんのお宅へ走りこみ、

玄関をどんどん叩いて呼び出して、


「あの、あの、木の裏の、裏の・・・」


と言うと、


「あれですか、見てしまいましたか。」


と妙に落ち着いています。


「あの木は昔から不思議な力があって、

自分の命と引き換えに恨みを晴らす事ができるという

言い伝えがあるのですよ。

それで今でも願をかけに来る人が絶えないのです。」


「普段は布を被せて隠しておいているのですが、なんでまた」


「あっ!!!」


私が拾い上げたのは先輩のジャケットではなく、白い布でした。


しかも良く見るとお経のようなものが一面に薄く書かれています・・・


「これはいけない!あなた呪いに魅入られましたね」


恐怖のあまり、固まってしまった私に住職さんは続けました。


「早く払わないと大変なことになります」


それから直ぐに神社に入り、お払いをしてもらいました。


お礼を言って帰るときに、


「これから先、あまり木の多いところや大木のそばに行かない方が良いでしょう。

ある種の木には負の力があるのです」


と言われました・・・。


でもどうしてあの布は落ちていたのだろう。


あの布には呪いを静める効果もあるそうなのですが。


販売所に1時間以上遅れて帰った私はさんざん所長に怒られました。


もう辞める気でいた私は怒られている途中にも関らず、

部屋を見まわして、先輩がいない事に気がつきました。


私 「あれ先輩は?」

所長 「あいつもまだなんだよ」

私 「えっ!」


嫌な予感がしました。


2度と行きたくなかったのですが、もう明るくなってきたし、

心当たりがあるのに放っておくわけにもいかず、

所長や他の人ともちろん住職さんも呼んで神社へ行ってみました。


今度はあの大木の裏もきちんと布がかかっています。


突然、


「キーキー、ホッホッ」


と上のほうから猿のような声が聞こえてきました。


何事?と見上げてみると、

あの大木の上で全裸の先輩が髪を振り乱して

枝にぶら下がってはしゃいでいます・・・


気がふれてしまったようでした・・・


しばらくどうする事も出来ずに皆呆然と上を見上げていると、


「ドサッ」


先輩は落ちてしまいました。


慌てて駆けよると、先輩の頭はざっくりと割れて

素人目にももうダメな感じでした。


皆声も出ないし、動く事もできずに立ち尽くしていると、

住職さんが先輩に歩み寄りました。


なんとかしようと思ったのでしょう。


「うわっ!!」


住職さんが先輩から飛び退きました。


良く見てみると、

先輩の割れた頭から血で真赤になったわら人形が

まるで生き物ののようにぞろぞろ這い出てきて・・・


それから無我夢中で逃げてしまい、バイトも辞めました。


後から聞いた話では、その先輩は

配達中に小便をしたくなると決まってあの大木にしていたそうです。


あの晩、白い布を動かしてしまったのかもしれません。