当事わたしは高校生で、進学も決まり、

受験から解放され非常にのんびりした気分でいました。


その夜のことはよく覚えています。


進学予定の大学の彼氏と久しぶりのデートの後で、

怖い体験をする様な精神状態ではなかったというか…


ホラーを観たわけでも肝試ししたわけでもなく、

普通に浮かれていたんです。


帰ってきて、お風呂からあがり

自分の部屋でスタンドライトだけつけて

雑誌をだらだら読みながら

いつの間にか寝てしまっていた私は、

トイレに行きたくなって夜中(時間は確認していません)に起きました。


当事の私の部屋は横長の八畳で、

ドアから右側の端に縦にベッド、

向かいの壁に勉強机をベッドに背中を向けるかたちで、

ベッドサイドに出窓という部屋でした。


トイレから部屋に戻ってベッドに寝ようという時、

突然窓の外から


「バチン!」


と大きな音がしました。


深夜なので音の大きさにびくっとはしましたが、

怖いとは思わず、とにかく眠い…

といった感じでベッドに腰かけました。


その時、視界の隅に妙な影が見えました。


机の横、椅子に隠れたあたりに

黒く何かあるのです。


そこの一角だけ異様に暗いというか…

スタンドライトの薄いあかりはついているのに、です。


目にはいった時から既に、


「やばいやばい…見るな見るな見るな」


とは思いましたが、

ちょうどベッドの向かいだし、

どうしても見てしまう。


冷や汗のような、

緊張で躰が冷たいような中、

じっと見つめました。


どうやら影というより

大人がぎゅうっと小さく蹲って

座っているようなのです。


男か女かもわかりません。


子供ではないようでした。


実際にしてもらえるとわかると思うのですが、


「そこにいる!」


という質量があるのです。


ただ、明かりがあるにも関わらず

ただだだ真っ黒くて…

生き物ではない気持ち悪さでした。


ほんの何秒かの出来事のはずが長くて、

耳や首がドクドクいうのを感じました。


ふと、その暗いのが動きました。


首だけ回して、

こちらを振り返ろうとしている…!


こちらを向かれたら、

絶対にいけないと思いながら、

私も目が離せなくて…


パニックになった瞬間、

貧血で倒れる時のように、

目の前に白いモヤが出て、

気を失いました。


気が付くとベッドに腰かけたまま、

倒れこんだ格好で昼になっていました。


目覚めてからのほうが

思い出して怖かったです。


あぁ、

気を失えて本当によかった、

と思いました。


それからすぐに一人暮らしを始めましたが、

おかしな事にはそれからは会っていません。


ただ、実家に帰っても

自分の部屋で寝ることはありません。