俺が厨房だった時の話


今みたいに暑くて

二階でアイスを食ってたら母ちゃんが


「タロウ(犬の名前)の散歩に言ってくるきんねー!」


って言ったのが聞こえた。


俺はアイス舐めながら適当に返事した。


アイスを舐め終わったので

アイスの棒を捨てに一回に降りたら

タロウが庭で尻尾振りながら俺の方に向かってきた。


「え?散歩行ったんじゃねーの?」


とか思って母ちゃんの名前を呼んだけど

返事は無かった。


変だなーとか思って

取り合えず母ちゃんを探しに外に出てみた。


あちこち探している内に

やっと公園の近くで母ちゃんを見つけた。


だけど


「母ちゃん!」


って呼んだけど返事は無かった。


よく見ると母ちゃんの足元には

真っ黒でヌメヌメした気味の悪い生物がいた。


形は犬なんだけどそれ全然タロウじゃないの。


光沢があるっていうかなんか気持ち悪かった。


直感で


「ヤバい!!」


って俺は思って母ちゃんを引きとめようとしたんだけど

丁度トラックが来て母ちゃんは引かれて跳ね飛ばされた。


その瞬間黒い奴は素早く逃げて

向かいの草むらの中に飛び込んで消えた。


母ちゃんは幸い骨数本折っただけで済んだ。


その時の事を母ちゃんに聞いてみたんだけど


『タロウにリード(紐)を付けようとしたら

目の前が真っ暗になってそこから全然覚えてない』


らしい。


ただしばらく立ってから

俺が母ちゃんを呼ぶ声が聞こえたらしい。


だからそっちの方へ行こうとしたんだけど、

その時引かれた、みたいな事を言っていた。


結局あの黒い生き物は何だったのだろう。


俺が今まで生きてきて一番不思議な出来事。