俺が工房のときの話。


その日の夜はなかなか寝付けなかった。


翌日授業があるから早めに寝なきゃまずいと思ってはいたんだが、

どんなに頑張っても眠れやしない。


闇の中で途方にくれていると、

次第に夜の静けさが気になってきた。


何と言うか、

静かすぎて逆に何かが聞こえてくるような気がした。


その時、本当に音が聞こえてきた。


始めは微かな音(サー…とかザー…とか)だったから

単なる耳鳴りだと思っていたのだが、

次第に大勢の人が談笑しているような音になってきた。


声は遠ざかったり近くなったりした。


丁度、部屋の中をぐるぐると旋回しているようだった。


声は俺の真上で一層大きくなり、

俺を圧倒するように、たたみ掛けるように騒ぎ立てた。


あまりの騒々しさと恐怖から、


「消えてくれ、もう勘弁してくれ」


と念じて目をつぶっていた俺の頭を、



誰かの手が、


   バンッ!!!!


と布団に押し付けた。



そのままの姿勢で身動き取れなくなった俺は

(目開けたら幽霊見てまうと思った)、

気がついたら朝を迎えていた。


部屋には誰もおらず、荒らされた形跡もなかった。


結局あれは何だったんだろうと。


単なる疲れすぎだろうか。