いとこのバイト先の話をしようか。


従姉と言っても、学年は俺と同じ。


もうすぐまた一つ年上になる、

それだけの差だ。


同い年の従姉、

美保は最近外食チェーン店で働き始めた。


「ナオは前にもあたしと同じモノを視てるから、

信じてくれると思うんだけどさ。」


この間顔を合わせたら、美保はそう切り出した。


俺は確かに変なモノを見聞きすることがあるが、

どちらかと言えば気配を感じるとか、

そういう漠然とした体験の方が多い。


何だよ?と聞き返すと、

バイト先でちょくちょく不思議な事があると言う。


夕方、入口の自動ドアを年輩の男女と小さな女の子が入って来る。


「いらっしゃいませ!」


店員が一斉に声をかけた。


テイクアウトのレジカウンターには同僚がいたので、

美保は入って来たところを見ただけだった。


しかし、買い物を済ませて出て行く気配にまた振り返ると、

ドアを出て行ったのは男女だけ。


不審に思いレジの担当者に訊ねてみたが、

彼らは始めから二人連れだったと言う。


そんな筈はない。


祖母らしい女性の左手をちょこんと握った女の子が、

確かにいた筈なのだ。


…でも、店員の誰もそんな子供の姿は見ていないと言う。


深夜、若い男女のグループがやって来た。


美保は「ヤンキー風」と言ったが、

ここでは一目でDQNと分かる風貌と言うべきか。


「いらっしゃいませ!」


やっぱり、店員が一斉に声をかける。


イートインのコーナーの担当の美保が

人数分の水とおしぼりをもって行くと、

6人いた筈の客が5人しかいない。


トイレに行ったのかも知れない。


「ご注文は、お客様全員揃われてからの方がよろしいですか?」


美保が訊くと、5人は顔を見合わせた。


あれっ?と思ったが、

彼女が笑顔のまま待っていると、

そのうちの一人が青い顔をして、言った。


「……あの、俺らこれでゼンブなんだけど。」


その場は


「私の勘違いでした」


と取り繕ったそうだが、


自動ドアを潜った時、

確かに彼らは6人いたという。


「あれ、店に来る前にどこ行ってたんだかなぁ。

お店にいる間じゅう全員お通夜みたいな顔してたんだよな。

心当たりがあったのかもねぇ。気持ち悪かったよ。」


まあ、ありそうな話ではある。


心霊スポットの帰りに立ち寄った食堂で、

水が1個余計に出て来る…

なんて怪談話ではありがちな展開だ。


考えたら、そんなことがあったら

水を出した方の店員だってイヤに決まってる。


しかし、子供連れの話の方は何だったんだろう?


俺がそんな事を思っていると、

美保は全然違う事を考えていた様だった。


「そうやってしょっちゅう入って来るのを見てるんだけどさ、

今まで一人も出て行ってないんだよな。

ちいちゃい女の子も、ヤンキーっぽい子も、他の人も、

みーんな店に入って来るだけ。

いつ出て行ってるんだろう?」


「今も全員、店にいるんじゃないの?」


…そう思ったけど、俺は笑って誤魔化した。