うちの母の体験談。


母は小さい頃から見えはしなかったけど、

音とか


「なんかいやだな」


と感じるくらいの霊感の持ち主だったらしい。


でも高校の時におじいちゃんが死んでから

更に強くなったそうな。


私が小学生低学年の時の話。


家族で海までドライブに行った。


海を眺めた後、

車まで戻ろうと歩いていると、

車のブレーキ痕みたいなのが目に付いた。


新しい感じがしたので、


「最近ここで事故でもあったのかな。可哀相に」


と思った瞬間、

肩がズシッと重くなったと。


それから帰路について、

家に戻ってもずっと重くて、

どうやら「連れて来てしまった」そうだ。


母は霊感があるけど、

幽霊には無知で


「しばらくすればいなくなる」


ぐらいに思ってあまり気にしなかった。


しかし次の日も重い肩は変わらず。


むしろ酷くなっている感じ。


それだけではなく、その日の夜。


誰もいないはずの流し台から

水を飲む音が聞こえて来た。


確認してみたけど誰もいない。


気のせいかと思ったらまた音が聞こえる…


でもやっぱり誰もいない。


それを何度か繰り返した。


また次の日の夜に、

寝室からバタンバタンと

誰かが布団に潜って暴れてるような音が聞こえた。


これは私も覚えてるんだけど、


「なんの音?」


って母に聞いたら


「気にしないで大丈夫だよ」


って言われた。


大人になってから真相を聞いたんだけど、

音が鳴ってる時に寝室を覗いたら、

誰もいないはずの布団が人が入ってるかのように

モコッとなってたらしい。


そしてそれが暴れてる。


ママンは怖くて、

正体を確かめてやろうなどは思えず…

放置するしか無かった。


しばらくしたら音が止んで、

何ごとも無かったかのように

静まった寝室に戻っていたらしい


それからは夜になると寝室から音がして、

止んだなと思って寝ようとすると、

流し台から例の音がする。


あとは寝ている時に足下に誰か立っている気配や、

金縛りにあったりしていたそうだ。


それでも、

誰に相談していいか分からなかった母は、

我慢というか、放置し続けていた。


そんな事が続いたらしいが、

ある日いつものように寝ていると、

突然目の前に血だらけの男が立っていたらしい。


ハッとして起き上がってみたら、

誰もいない。


なんだったんだと思って目を閉じたら、

また血だらけの男が立っている。


瞼の裏に張り付いてる映像のように、

目を閉じたら見える。


直感で、

ここ数日の奇妙な現象を起こしている犯人だと思った。


「どうしたの?」


と尋ねると、

ちょっと笑っていたそうだ。


ずっと目の前にいるもんだから眠れず、

話しかけても微笑むばかりで何も言ってくれない。


いつの間にか朝になっていた。


仕事に行く時間だが、

体も疲れ切っていて起き上がれず…


そんな事が数日続いていたものなので、

食欲も無くなってきてしまっていた。


見るからにやつれていた母。


それでも、誰に相談しようか…

でも信じてくれるか…

という考えから、打ち明けられずにいた。


そんなある日同僚の人が母の異変に気付いてくれ、


「相談事あるなら聞くよ」


と言ってくれた。


母は、

もう信じてくれなくてもいいから打ち明けようと思い、

ここ数日の出来事を話したそうだ。


同僚の人は真剣に聞き、

母の話を信じてくれた。


それから名刺を渡され、


「この人が力になってくれるから今日でも行ってみて」


とアドバイスをくれた


母は藁をもすがる気持ちで

早速紹介された人の家に向かった。


着いた場所は普通の一軒家で、

中から出て来た人も普通の主婦っぽい人だった。


その主婦さんは、

母の顔を見るとすぐに


「家に入らないで」


と玄関先で待たせた後、

塩を持ってきて母にかけた。


やっと家に上がらせてもらい、

早速相談しようと思ったら「わかってる」とだけ言って、

母を黙らせた後、

母が見た血だらけの男の特徴を言って


「こういう男の人でしょう」


とまるで見えているかのように、

母の肩ら辺をジッと見ていたそうだ。


それから塩と線香を渡し、


「家の玄関やリビングなどに盛り塩をして。

とくに霊が現われる場所を重点に。

なくなったら盛り直して。

線香もたいて」


と言い、

その日は帰された。


母は帰ってから

流し台とベッドルームを重点に盛り塩をし、寝た。


その日は何もなかったが、

寝室に設置した塩が溶けていたらしい。


玄関と廊下のも溶けていた。


すぐに盛り直して、

またあの主婦の所へ行った。


主婦曰く、

溶けていた所は通り道とのこと。


昨日は何もなかった事に感謝しつつ、

自分は何をすればいいか聞いた。


「3日後にお迎えが来るから、

それまで塩と線香を忘れないで」


とだけ言われ、その日も帰った。


言われた通り、

塩が減っては盛ってを繰り返し、

主婦が言ってた3日後が来た。


その日は休みで何となくソファに座ってウトウトしていると、

急に金縛りに遭い身動きが取れなくなってしまったそうだ。


パニックになっていると、

遥か遠くからお経が聞こえる。


しかも少しずつ近付いて来る。


一人ではなく

何十人もの人がお経を唱えているようだった。


母は目をつむり、

ジッとしていたが、

あっという間に囲まれてしまった。


何が起きたか分からない状態でお経を聞くこと数分、

いつの間にかお経は聞こえず、

自宅のソファで汗ビッショリになりながら座っていたそうだ。


その日から変な現象は起こらなくなった。


母が言うには

「お経の人が連れて行ってくれた」そうだ。


主婦にお礼をしに行くと、


「無暗に可哀相と思っては、

霊をナンパしているようなもの。

動物の霊もそうだが、

見たら『何もしてあげられない』という気持ちでいないと付いて来てしまう。

気をつけなさい」


と少し怒られたそうです。


これでこの話は終わりですが、

母は霊感が少し強いせいか、

後日も色んな霊を連れて来てしまった話も聞きました。


当の私は霊感など皆無なので、

似なくて良かったな…と体験談を聞く度思います。