俺の幼馴染の女から聞いた、体験話。


本人は二度と思いだしたくない話だそうです。


俺とその女(仮に、Oとする)が通ってた小学校は

できたばっかりの新しい学校で、

施設の勝手も普通と違ったし、そもそも廊下がない、

という不思議な構造をしていた。

(オープンスペースというらしい)


つまり各階に大きい部屋がひとつあって、

それを4つに区切って教室ってことにしてた。


その大きい部屋の出口に

ひとつづつ(計二個)トイレがあった。


で、そのOは放課後まで

委員会の仕事かなんかで学校に残ってたそうだ。


一緒に帰る友達ももういないし、

用を足してからすぐ帰ろうと思ったらしい。


他の施設と同様、

学校はトイレもすごい綺麗だった。


全面が水色に統一されたタイルで、

スリッパもみんな水色。


とりあえずOは真ん中の、洋式の個室に入った。


新式と言ってもトイレの構造まで変わりはしない。


ドアと床の間にちょっと隙間がある、

なんの変哲もないトイレだ。


と、しばらくすると誰かが入ってきた。


スリッパの音と気配で、Oはそう思った。


そのトイレは3Fで、

高学年しかいない最上階。


さっきまでは誰もいないと思ったけど、

委員会の部屋に誰かが残ってたかもしれない、

とOは納得した。


ペタペタという音がトイレに響く。


その音は一つ目の個室を通り過ぎ、

Oの個室を通り過ぎようとして、

突然止まった。


おや、とOは思った。


トイレの個室は全部で三つ。


入ってひとつめ以外はすべて洋式だ。


ひとつめの和式トイレを見て入らなかったのなら、

三つ目に行くハズだ。


と、Oの個室に


「コン、コン」


とノックの音が響いた。


そうか、外からじゃ人が入ってるか入ってないか分からないか、

とOは思った。


すぐさま


「コン、コン」


とノックを返す。


そこで、外の子は三つ目の個室へ行くハズだった。


が、


「コン、コン」


またノックが返ってくる。


Oは不審に思った。


友達の悪戯だろうか?


でも、みんな委員会には入ってないし・・・


怒鳴りつけるにも、

知り合いじゃなかったら恥ずかしいので、

仕方なくまた


「コン、コン」


とノックを返した。


「ドン!ドン!」


返ってきた音に、

Oは心臓が跳ねあがるかと思った。


ドアを壊そうとするかのような勢い。


明らかにノックの音ではない。


外からの衝撃で、個室のドアはきしみ、

壊れるのではないかとOは心配になった。


ここまで悪質ないたずらをする友達は、

Oにはいない。


そう感じたOはいよいよ気味が悪くなり、

すぐに出なきゃ、とスカートを履こうとした。


「、、、、、、、、あ」


そこでOは見てしまった。


トイレの壁と、床の隙間、その間に。


スリッパを履いた、裸足の足があった。


個室に侵入しようと、

限界まで突き刺さった足。


いやに白い、

生きている人間の足とは思えない肌の色だった。


「直視していたら気が狂う」


そう思ったOはすぐ視線をそらした。


あんなものがあってはならない。


「確認など絶対にできない」


Oは泣いた。


泣きながら、目を瞑り、耳を塞いで耐えた。


なんで自分がこんな目に!


そう思いながら、

Oには耐えることくらいしかすることがなかった。


体が震え、嫌な汗が出てくるのを感じた。


なにより恐ろしいのは、

目の前のドア越しにいる「なにか」からは

まったく音がしないことだった。


呼吸する音も、動く音すらも。


Oの噛み殺した嗚咽だけが、

夕方のトイレに響いていた。


5分くらいだろうか。


10分かもしれない。


しばらくして、

Oはおそるおそる目をあけた。


視界には、さきほどの隙間、白い足・・・


何もない。


ドアの下には水色のタイルが

夕日を受けて光っているだけだった。


放課後のトイレは、

もとのように静まりかえっている。


先ほど感じた「なにか」はもういないようだった。


安心したOはおそるおそるドアをあけた。


何もいない。


が、視線を下したOは、はっと息をのんだ。


彼女がいた個室の前に、

一対のサンダルが並ぶように置いてあった。


その時、Oは思い出した。


そう、さっきの足は


「どんなスリッパを履いていたっけ」


と。


Oは泣きながら家に走り帰った。


残されたものから逃げるように。


水色で統一された空間にあるまじき、

「赤色のスリッパ」から。