俺の友達が大学のサークルの仲間四人と、

つまり計五人で肝試しに行った時のこと。


場所はN県にある、

五階建ての廃病院(地元だと結構有名な心霊スポットだとか)。


そのメンバーは男三人と女二人という構成で、

そんでその中の女の子の一人が、


「私、生まれつき霊感持ってる」


と何かと吹聴してるようなやつなんだと

(でも誰も信じてなかったらしい)。


それでN県は東京からはそれなりに遠いらしくて、

そいつらは午後十時頃に出発。


N県に到着したのは午前零時。


んで、そっから目標地点までは二十分くらいだと。


で、病院までの道の途中、

例の霊感女が


「いやなかんじがする」

「戻ろう。絶対やばい」


だの言い始めて、

そいで病院が見える距離に入ったら


「嫌!こわい!こわい!こわい!」


とかものすごい大声で叫び出したそうだ。


仕方ないので、

来る途中あったコンビニに

その子を置いてこようってことになって、

車は来た道をUターン。


そのコンビニについたら

偶然タクシーが止まってたらしくて、

その子はそれに乗って帰ったらしい。


んで俺の友達とかも

ちょっと怖くなってきてたんだけど、

せっかくここまで来たんで

とりあえず廃病院にいったそうだ。


時間ロスしたんで、

病院に着いたのは結局一時頃だったとのこと。


車を病院の傍に止めて、

多少びびりながらもメンバーは早速肝試しを開始。


なんと怖がりの俺としては信じられんことに、

連中は病院を一階から五階まで

くまなく探索したんだと。


中は想像してたほど散らかってなかったとか言ってた。

(でも一階と二階は落書きだらけだったらしい)


で、何の怪奇現象も無く全員無事に屋上まで到着。


四人は安心して


「なんだよつまんねーな」


「気ぃ利かせてでてこいよ」


とか言い合ってて、で

屋上でしばらく休んでたらしい。


で、男の一人が何気なく

屋上の手すりの方に近づいて、

そこで異変に気づいた。


「下の方に人がいるぞ」


「マジ?」


「霊魂でも見たか(笑)」


みたいに、それでも俺の友達とか、

そいつがからかってるんだと思ってて、

まだ軽口叩いてたそうな。


んで、実際みんなで真下見てみたら、

ほんとに人が居たんだと。


しかも三人くらい。


でも幽霊って感じじゃなくて、

普通の服着たおっさんとか、

黄色いワンピース着た太ってるおばさんなんだとか。


そいつらは病院入るでもなく、

病院の傍でぼーっと突っ立ってるだけなんだと。


「おーい!」


と声かけても反応無し。


これは普通じゃないってんで、

みんなびびって速攻手すりから離れた。


女の子が


「なんかやばいよ。帰ろう」


って言い出して、残るみんなもそれに賛同。


でも、そのおっさんとかおばさんとかは

病院の入り口にいるので、

どうしようって事になった。


とりあえず俺の友達がもう一度、

手すりのほう行って下見てみた。


したら、


「おい、増えてるぞ!」


三人だったのが、

何か三十人ぐらいに増えてたらしい。


やっぱり見た目は幽霊っぽくなくて、

じじいとか子供とかいろいろ居たらしい。

(でも五階なんであまりよくは見えなかったとのこと)


そいつらはやっぱりぼーっとしてて、

うじゃうじゃ突っ立ってたらしい。


でも、俺の友達が気づいた。


「あいつら見てる!こっち気づいてんぞ!」


そいつらは突っ立ってるだけなんだけど、

じっと手すりにいる俺の友達とかを見てたらしい。

(五階なのですぐには気づかなかった)


女の子は叫び出したりして、もう大混乱。


そんでも降りるのは怖いので、

全員屋上で朝まで震えてたんだと。


朝になったらそいつら居なくなってたので、

速攻で東京に帰ったとか。



後日談。


例の霊感女によると、


「あそこに地獄の入り口があった」


だとか。


さらに、最初に病院が見える距離まで車が入った時、


「空の方から無数の霊が

病院の傍の森に降りてくるのが窓から見えた」


らしくて、それで叫び出したんだとか

(最初に教えてやれよって感じだが)。