小学校の頃、俺はそんなに友人が多い訳でもなく、

どちらかというと一人でいる事の方が多かった。


そんな数少ない友人の一人にT君がいた。


俺の住んでいた土地は、市街地から電車でトンネルを二つ抜け、

陸橋を渡ったところの山の合間にあった。


田んぼと山と川ばかりの何もない所だ。


そんな場所なので、いつも遊ぶのは自然の中だった。


T君は虫取りの名人で、よくカエルや蛇を捕まえては俺に見せてくれた。

いつものようにT君についてまわって雑木林で泥んこになって遊んでる時、

T君は体長30センチくらいの蛇を捕まえた。


その蛇はみたこともない白いうろこの蛇で、得意げに俺に見せてきた。


俺は


「これなんていう蛇?」


と聞くとT君は


「しらん。でもこれは毒がある。」


そういって彼は


「今から毒を抜く!」


と手にとった蛇のしっぽを掴み地面に叩きつけ始めた。


しばらくやってるうちに、蛇はぐったりと動かなくなった。


心配そうにたたずんでる俺を見て、T君は


「大丈夫!毒は抜けた」


と言った。


俺はそんな知識もないので、そうなんだろうと納得した。


それからしばらくして、蛇の事はもうすっかり忘れていた7月の終わりのこと。


小学校も夏休みに入ろうとしていた。


その日は半日授業で一人で下校していた。


帰り道は、まっすぐの道を挟んで左手に田んぼが広がり、

右側に幾つか住宅が立ち並んでいる。


いつも通いなれた道だった。


田舎とはいえ真昼なら買い物帰りの人や、

他の下校する同級生がいるはずなのに、誰もいないことに違和感を感じた。


何か耳鳴りがした。


ふとみると、道のずっと遠くの先に誰かが立っていた。


「なんだろう?」


立ち止まって観察した。


その人物はゆらゆら陽炎のようにたたずんでいた。


遠目に白い神主さんが着ているような装束に身を包んでいるようにも見えた。


しかし、遠くにいるのに顔だけははっきり見えた。


真っ白い人間のような顔、やけに白い肌、目は三白眼、

口元は耳まで裂けて、無表情のままこちらをじーっと見ている。



「あっ」


と思った。


あの時の蛇だ!


何をするもなく彼はただじっとたたずんでいた。


しかし、彼からは目を離すことができなかった、

まるで彼と自分だけ違う空間にいるようだった。


お日様が照っているというのに、とても怖かった。


不意にワイワイ・・・と話す声が聞こえた。


視界にランドセルをしょった下校中の見覚えのある生徒が見えた。


彼らは俺がいるのにもかかわらず、何事もないように通り過ぎようとしていた。


「あ・ぁ・・」


小さく声を振り絞るのが精一杯だった。


その瞬間、立ちくらみがして視界がうねった気がした。


しばらくボーっとしてたが、

ちゃんと近くの町工場の作業音やセミのなく声がはっきり聞こえ、

通行人もたくさんいた。


「○○(俺の名)こんなトコでなにしてるの?」


ふいに声をかけられた。


「え?いや今・・・」


「ていうかお前、いつからそこにいた?」


「・・・・」


もう、説明する気もうせていた。


あの白昼夢みたいな体験はなんだったんだろうと思う。


そして何故俺だったのか?


ただ、彼と出会った場所は例の雑木林の近くで、

その横にある用水路と田んぼに挟まれた小さな一角に小さな社があったことを最近、思い出した。