高校2年のころHという同級生がいた。


そいつは優等生で人当たりも良く、

相手が不良だろうがオタクだろうが

分け隔てなく接し、大半の生徒から好かれていた。


俺もそんなHが嫌いじゃなかった。


冬休みが明けて3学期が始まったとき

Hに異変が見え始めた。


いつもニコニコしていたのが全く笑わなくなり、

休み時間も席から離れず、

ずっと机に伏せたままにしている。


冬休み前より確実に頬もこけている。


風邪でもひいたのだろうと

誰もそれほど気にしていなかったのだが、

ついには学校に来なくなった。


心配をした友人がHの親友であるFに


「Hどうした?入院でもしてるのか?」


と聞いた。


「入院はしていないみたいなんだけど、

体調が悪いらしい。

今日帰りにお見舞いに行こうと思ってるんだ」


とFが答えた。


すると友人が俺達もついて行くと言い出し、

俺も流れでお見舞いに行くことに。


Hの家はマンションの3階だった。


Fが玄関のインターホーンを押すと、

玄関のドアが開き中からHの母親が出てきた。


「あら?F君こんにちは。

あとは同級生の方達?

わざわざありがとうね。

ごめんねあの子今寝てるのよ。

病気はたいした事無いんだけどね」


と、明るく答えた。


その様子からして深刻な病気では無いのだろうと

俺が思っていると、家の奥からHが出てきた。


一瞬それがHだとは思えなかった。


顔は痩せ細り青ざめている。


なにより目が違う。


キツネのようにつり上がってるのだ。


そんなHが部屋の奥から四つん這いでこちらを見て、

口をムニャムニャ動かしている。


寒気が全身を走った。


これがあのH??


Hの母親も奥からHが出てきていることに気付き、

慌てて俺達3人を玄関から外に押し出しドアを閉めた。


帰り道、

さっきの事が理解できないでいた俺と友人は

黙って歩いていた。


その沈黙をFが破った。


「・・・Hは猫に呪われてるんだと思う・・・

猫が憑いている」


「は?」


俺と友人はFの方を見た。


「Hは空気銃で猫を撃つのが趣味なんだ。

野良猫を見つけては・・・

クラスメイトの名前をつけて…撃つんだ。

俺、可哀想だからやめろよって言ったんけど、

Hがやってるとなんか

間違ったことやってるように思えなくなってきて・・・」


猫が憑いている!?


んなバカな!


でもあのHの変貌ぶりといったら・・・・


・・・そんなことが現実に起こりえるのか??


つーかHの趣味が猫撃ち?


クラスメイトの名前つけてって・・・


などと混乱してるとFが、

もういっかいHの家に戻って

この話をHの母親に説明してくると言い出した。


俺達はもう関わりたくなかったので

そこでFと別れた。


Hはそのまま学校には来ないで

転校という形で去っていった。


後日、Fの話によると、

あのあとFも交えてH家で家族会議が開かれ、

Hの父親の実家近くの寺だか神社だかに

Hを預けることになったらしい。


「Hが可哀想だから

この話は他のクラスメイトには話さないであげて欲しい」


とFは言った。