私は某大学の守衛をしています。


守衛とはいえ夜間見回りまで任されているので

一人で夜の学校内を歩かなければならないのです。


まぁ、深夜でも多くの研究室は人がいるので

助教授から珈琲を勧められたりと

比較的明るい仕事でもあるのですね。


しかし先週、怖い、というか

不可解な現象に遭遇してしまったのです。


深夜巡回は午前12時と決まっておりまして

携帯蛍光灯一本で建物内を巡回するのです。


いつもどおり、下の階から順次五階まで見て回るつもりでしたが、

その日はまっすぐ五階へと回りました。


外から窓を見上げたとき、

東の角の部屋の窓が開いていて

カーテンがひらひらと外に出ていたからなのです。


第三研修室は午後七時の巡回の時に

全ての窓の戸締まりを確認したので

開いているのが気になったのです。


しかし、五階には人の気配は無く、

件の第三研修室の引き戸もしっかり施錠されておりました。


ただ、中からは何と申しましょうか、

明らかに空気の流れが違うような気がするのです。


窓から入り込む風の所為だけではないような

尋常ではない雰囲気が。


私も決して肝が据わっている人間ではありませんので

手に持っている鍵を差し込む気にはなかなかなれませんでした。


守衛の仕事というのは

門の所の詰所に座っているモノだと勝手に思いこんでいたので

夜間見回りの怖さを味わうことはないと勝手に想像し、就職したのです。


所謂、恐がり─と呼ばれる部類の人間なのです。


しかし、放置することは出来ないので

帰りたい気持ちを堪え、鍵を回しました。


引き戸に手を掛け、そっと開いてみたのです。


ところが、予想に反して何の異変も見られないのです。


何も。


─窓も閉まっておりました。


確かにカーテンが翻っていたのも見たのですが。


…その部屋にはカーテンなど存在もしなかったのです。


ブラインドが上に上がったままになっておりました。


私は不意に怖くなり、鍵を閉め、一階の玄関に駆け戻り、

上を見上げて確認し直したのです。


五階角部屋の窓は閉まっておりました。


確認した通り。


カーテンも存在しておりません。


…しかし、ブラインドが 下りておりました。


その日の巡回はもう怖くなってしまい、

詰め所に戻り同僚を電話で呼び出し

急遽交代してもらいました。


どうやらその研修室は以前から

一寸変わったことが起こるらしいのですが

守衛仲間の中では「気にしない」という事になっていたそうです。