小指の第一間接ほどの小さな人形。


露店のようなとこに大量に売っていた。


周りの人も買っていて結構繁盛してたような。


勢いで俺も購入した。


ただ、なぜかあんまり外見覚えてない。


飾り気のない感じで、

DQにでてくる泥人形みたいのだったと思う。


人形は小さかったが動力?がついてるようで

震えるような奇妙な動きをしたり、

何語だかわからんうめきのような音を出すことができた。


更に奇妙なことに、

スイッチとかぜんまいがあるわけじゃなく

不定期に声がでたり動いたりする。


俺はその奇妙さが気に入ってどこにでも持ち歩いてた。

(ストラップみたいのがついてたので持ち歩けた)


この時は、へーこれ小さいのにすげえ技術だなって感心してた。


ただ、この頃から俺は

かなりの頻度で悪夢にうなされるようになった。


内容は覚えていないが、

起きると汗びっしょりになっていた。


それに起きてる時もなんかだるい感じがしてたり、

体調が良くない事が多くなった。


その日の俺も少し横っ腹が痛くなっていた。


その時俺はハッとした。


なんていうかその人形、

人が苦しんでいる姿を喜んでいる気がするのだ。


表情なんてものはないんだが。


確実にそう感じる。


そういえば、体調悪い時ほどよく動いていたような・・・


そんな時に人形が急にこちらを向いた気がした。


俺は恐ろしくなって人形を投げ捨てた。


人形は近くの柱に勢いよくぶつかってバラバラになったが

中心部の辺りから何かこっちに転がってきた。


何かの部品が跳ね返ってきたんだろうか?


ピラミッドのような四角錐の物体だ。


ただピラミッドと違うのは

先端を丸くくり抜いた穴になっていた。


なにか音がする。


小さくてよく聞こえないが

ぎぃぃぃぃという唸っているような音は

そのピラミッドの穴から聞こえてきた。


どうも人形のうめきはこの音らしい。


もうこの時点で結構嫌な気がする俺。


だがこいつが人形の動力部だとすると

あの恐怖を取り除けるんじゃないか。

中身が精密機械なら何も不思議じゃない。


このときは、

オカルト的なものを否定したい気持ちで一杯だった。


恐る恐る顔を近づけて見ると・・・


「ぎぃぃぃぃぃぃいやぁあああああああ」


音を立てて穴から

急にねじのようなものが突き出てきた。


人の悲鳴のようなその音は

ねじが回っている音だった。


俺は心底ビビりきって何かもう直感で感じた。


コレやばい!


というかおかしい。


ピラミッド状のものは高さが2cmくらいしかない。


だけど突き出たねじみたいなのは

どうみても倍の4cmくらいはある。


どうやって中に入ってたんだ?


どんな風に引っ込めても先端がはみ出してしまうはずだ・・・


相変わらず嫌な音は聞こえてるままだ。


もう一刻も早くそれを処分しないと狂ってしまいそうだった。


それで物凄い速さでチャリこいで

ちょっと離れた大通りまできたら

それを横にして置いておいた。


トラックとかが轢いてくれるように。


なぜか川とかに投げ捨てるよりいい気がした。


今考えると道に危険物を捨てるなんて完全にDQNなんだが。

そんな余裕は俺にはなかった。


そして俺はまた全速力でその場から逃げた。


帰り道、こういう話の定番みたいな、

いつの間にかあれが戻ってくるっていうのに

俺は相当びびっていた。


あれが戻ってきたら終わるって確信があった。


でもそんな事もなくあれは何処かにいったままだった。


それで家に戻ってから冷静さを取り戻してくると

また恐ろしくなった。


あんな不気味なものにあれほど愛着を持っていたなんて。


寝るときさえあれと一緒にいたことにゾッとした。