母から聞いた1番怖かった話。


昔母は某引っ越しのチーフをしていた。


ある日請け負った仕事は

一軒家の引っ越しだったが平日だった為、

前日までに梱包を終わらせて

積み込みはお母さんだけが家に残っていた。


引っ越しチームが荷物をトラックに積み込み、

うちの母と残ったお母さんで

積み残しがないか家の中を見回っていた。


すると作業してるときに

依頼人が全く触れなかったので

うちの母もスルーしていたのだが、

家の奥に1つ開けていない扉があった。


うちの母が


この部屋には荷物がないんですか?


と聞くと依頼人は


「私も開けたことがないんです。」


と答えた。


どうやら引っ越してきた時に開かなかったので

部屋も他にたくさんあったし

必要がないので開けなかったらしい。


中古の一軒家で築年数も大分経っていたので

無理に開けて扉を壊してしまったら面倒だと思ったそうで。


その家は取り壊しが決まっていたので

どうせだから開けてみようということになった。


母がバールで軋む扉を抉じ開ける。


鍵が掛かっているわけではないが、

扉が歪んでいるのかなかなか開かないので

かなり苦労したらしい。


思い切り力を入れて力ずくで扉を開けると、

6畳くらいの部屋に壁に沿うように棚が何段も付けられており、

井近くまで届く棚には、おびただしい数の人形。


棚にぎっしりと並べられたフランス人形や日本人形。


それらが全て入り口を向くように置かれていた。


部屋のどこを見ても人形と目が合ってしまうように。


入り口に立つ母を無数のガラス瞳が見つめていたそうな。


母と依頼人はそっと扉を閉めてそのまま家を後にした。


それからうちには人形が置かれたことは一度もない。