高校のとき体験した話。


バスケ部に入ってて大会前で帰りにはいつも真っ暗になってた。


早く帰りたくていつもは通らない公園を近道に使った。


ベンチの近くの外灯の下に乳母車とうつむいてる女の人の姿が見えた。


真っ暗なのに帰らないのか?

とか思いながら横を走りすぎた。


公園を出るときに、

きぃきぃって古い車輪の音が後ろでした。


あぁ、帰るんだなと思ったけど、

いちいち振り返って見たりはしなかった。


俺は急いでたからずっと走ってたんだけど、

きぃきぃって音がずっとついてくる。


一定の距離を保ったまま音が聞こえる・・・

こっちは走ってるのに?


振り返ったら、誰もいない。


公園からは直線だし、姿が見えないのはありえない。


けど、音は近くでしている。


こんなときに限って街灯が点滅したりしてて、

恐怖心が煽られる。


しかも、めちゃくちゃ寒い。


もう全力疾走で逃げ出したんだけど、

音はずっとついてくる。


結局家までついてきた。


いつもは玄関からあがるんだけど、

今日ばかりはすぐに明りの下にいきたくて、

茶の間にすぐ入れる入り口に駆け込んだ。


俺の顔が真っ青だったらしくて、

茶の間にいた祖母は驚いていた。


家の中でも車輪の音がはっきり聞こえる。


ウチは門から玄関までが入り組んでるから、

用がある人じゃないと入ってくるはずがない。


音は祖母にも聞こえてるようで、

顔つきが険しくなった。


「悪さなんかできやしないよ」


祖母の強い口調に、車輪の音がやんだ。


その瞬間にいっきに体温が戻ったような感じがした。


それからしばらく何もなかったんだけど、

祖母が旅行に行った日の夜、

茶の間の障子の向こうで例の車輪の音が。


かなり近くて生々しい。


思わず逃げ腰になる俺の横で、母が笑った。


「ネズミじゃない?」


そしたら、ぴたっとやんだ。


・・・なんでウチの女性衆はこんなに強いんだ?


自分の怖がりっぷりに馬鹿馬鹿しくなった出来事だった。