俺の家で友人のAとBとで

大学で出された課題を深夜までやってたんだけど

作業が煮詰まってきて、

今日はこの辺でいったんやめてどっか喫茶店でも行くか、

みたいな話になってさ。


3人で駅の方に歩いて言ったんだよ。


ちなみに俺は学校の近くに独り暮らししてるんだけど、

家から10分も歩けば喫茶店がたくさんある学生街に入れる。


日付をとっくにまたいでたけど

オール出来る喫茶店も一杯あってさ、

よく学校の帰りとかうちの学生が朝までダベってたりするんだ。


まぁ深夜だとトーストとか深夜料金で割高になるから、

クリームソーダとかで居座るんだけど。


そんでさ、その日はAが


「たまには新しいところ行ってみようよ」


って提案してきて、

俺たちは今まで入ったことの無い喫茶店を探す事にしたんだ。


とは言ってもこの辺りは本当に喫茶店が多いから

入ったことの無い喫茶店なんてすぐ見つかるんだけどさ。


でもなんとなく俺らの琴線に触れる店がなかなか無くて

暫くブラブラしてたんだけど、

細い小道に入ったとき××××って店があったんだ。


外見は普通の店で、

キャスターの付いてる光る置き看板に赤い字で

××××って書いてあるだけなんだけど、

その看板に俺たちは何故か妙に惹かれてさ。


その店に入る事にしたんだよ。


どっかの劇団のポスターとか貼ってある細い階段のぼって店に入った。


店内はなんというか昭和の雰囲気が漂ってていい感じでさ。


客は俺らしか居なかった。


BGMはガロだっけ?


『学生街の喫茶店』

とか古い曲ばっかかかってた。


結局俺たちは朝方まで一番奥の席に座って

コーヒー頼んでくだらない話したんだけど、

店を出るときに


「ごちそうさまでした。」


って言ったらマスターがニコって笑いながら


「ええ、また会いましょう。」


って返してきた。


俺たちは帰り道


「いい店だったね」


なんて言いながら家に帰ったんだ。


ちなみにコーヒーの味はいたって普通。


そして、ここからが変な話でさ。


後日学校の帰りに3人であの店に行ってみようって話になったんだよ。


ところが探せども探せどもその店が見つからない。


仕方がないからいつも溜まってる喫茶店に入ったんだけど、

どうしても××××の事が気になって

その店のマスターに聞いたんだよ。


「ねぇマスター。××××って喫茶店知ってます?」


「ん?あぁ××××か。

懐かしいね。火事が起きてね。

マスターが亡くなったんだよ。」


「えぇ?」


「ニ十年くらい前のことだけどね。」


今でも××××のマスターの


「・・・また会いましょう。」


って言葉は耳にはっきりと残ってるよ。