中学1~2年頃の実体験。


その頃俺は北海道の海沿いの田舎に住んでました。


その町にはちょっと小高い場所に「小高神社」って呼ばれてる小さな公園があって、

何故か真っ黒な石碑と二宮金次郎像がポツンと置いてあるんです。


それだけでも何か薄気味悪いのに、

さらに裏道で人がほとんど通らない物だから、

良く怪談話のネタにされてました。


曰く夜になると二ノ宮がまばたきをしているだとか。


曰く夜の12時に石碑に血文字が浮き出てくるだとか。


俺はあんまり怪談とか怖がる方じゃ無かったんで

「ふぅん」って感じで大して気にしていなかったのですが、

そんな噂もあって昼間でもあんまり遊んでる子はいない公園でした。


結構悪ガキ(あくまで田舎の尺度で)だった俺は

夜中にしょっちゅう家を抜け出して遊んでたんですけど、

ある日ふと「小高神社に行ってみよう」と思い立ったんです。


学校の怪談で騒いでる連中に自慢しよう、

とかの軽い気持ちだったと思います。


でも実際夜中の公園に着いてみると、

電灯の灯りがほとんど届いていなくて、

予想以上に暗く不気味でした。


度胸があると思っていた俺も思わずゾッとしました。


でもここで戻ったら腰抜けだと思って怖々公園の中を歩いて回りました。


二宮のまばたきを確認して、

独りでに揺れるとか言うブランコを漕いで、

石碑の周りを歩いて…


聞いた限りの怪談を確認してみましたが何も起こりませんでした。


やっぱこんなもんかぁ、と力が抜けた途端、激しい尿意が…

前かがみに公園の便所に駆け込んで用を足し始めました。


っしゃ、これで俺は明日から勇者だぜ、

とか頭の悪い事を考えながら気持ち良く放尿していると、

体が、ブルッ、と震えました。


小便中だから震えたと思っていたのですが、違いました。


便所の中がやけに寒くなっているんです。


良く怪談で聞く生暖かい、とかでは無く、本当に酷く寒いんです。


ちなみに季節は夏の初めで、そんな寒さはありえません。


(何かやばいぞ!)


と思った俺は早く小便を済まして帰ろうとしたのですが、

膀胱に大量に溜まっていたらしくて中々終わりません。


ガタガタ震えながら何とか小便を済ませて

チャックを閉めたその時、それは起こりました。


ぺたり、という音が聞こえたんです。


ちょうどフローリングの床を風呂上りに裸足で歩く時のような音でした。


気のせいだ、と自分に言い聞かせて

便所の入り口に向かって足を踏み出しました。


すると、俺の足音が響いたと同時に…


ぺたり、ぺたり、ぺたり、ぺたりぺたりぺたりぺたり…!


何人もの足音が大音量で聞こえ出したんです。


それはもう、学校のクラス一つ分の人数が

裸足で周りを駆け回っているような音でした。


俺は恐ろしくなって泣きながら家に走り帰りました。


便所から出た時には温度も音も元に戻っていたと思いますが、

とにかく怖くてすぐ後ろに足音が付いて来ているような気がしていました。


家に着くと部屋の電気を付けたまま眠りましたが、

眠るまでの間もあのペタペタという音が頭から離れていきませんでした…