クラスメイトの池上さんから聞いた話だ。

某有名体育系大学の水泳部は、練習に群馬県赤城山の大沼を使っていたのだという。

高原学校でも使われる赤城青年の家に宿泊し、沼の桟橋から飛び込みの練習をしていたというのだから驚きだ。

そして、練習の締めのようなもので、

部員全員が下級生から順に飛び込みをするというしきたりのようなものがあったそうだ。

桟橋に達、沼に向かって下級生から飛び込んで行く。

そのフォームを連続写真で撮影していくというものだったようだ。

そして順番は上級生に回り、いよいよ最後の一人が沼に向かって飛び込んだ。

勢いの良い水音と共に水中に姿を消したその部員は、どういうわけかなかなか浮いてこなかった。

他の部員達が心配を始めた頃、飛び込んだ部員が青い顔で突然水面に顔を出した。

体力を消耗しきったようにグッタリとした部員を他の部員達が助けに行き事なきを得たようだが、

いったいどうして水面に上がってこなかったのかを尋ねられても、部員は知らぬ存ぜぬで首を振るだけだったという。

そして大沼での練習が終わり、後日、部員一人ひとりのフォームを撮影した写真が出来上がったわけだが、

最後の部員が飛び込む瞬間の写真に目を疑うものが写っていた。

手だ。

それも無数の手。

まるで踏み切った部員を掴み取るかのように、水面から手が伸びているのだ。

連続写真を辿ると、彼が着水するに従い、

写りこむ手もまるで水中に部員を引きずり込むかのように彼の体を抱え込み、着水しているのだ。

それを見てしまった部員は、それきり水泳ができなくなってしまったそうだ。

大沼の数ある怪談の中でも、稀に見る危険なケースだ。