わたしの家は、とても厳しい家でした。

ある日のこと・・・・

父が出張で母も用事で遅くなるから、鍵を持って行かなければならなかったのに

うっかり忘れて、学校に行ってしまったのです。

家に入れず玄関の前でぽつんと待っていたのですが、お腹も空くし暗くなるし。

友人に電話をしました。

すると、免許取りたてほやほやの友人は颯爽と車でやって来ました。

ところが・・・鍵を忘れて揚句に遠出したとなれば、母の逆鱗に触れるので

わたしたちは、家の近所をぐるぐる走るものの・・・飽きちゃいますよね?

そこで、バスの折り返し地点に車を止めて他愛ないおしゃべりやお気に入りの音楽を聴き始めました。

バッテリーが上がると困るので、エンジンはかけたままギアをパーキングにして。

そこは、有刺鉄線で囲まれていて、周囲は非常に見通しのいい場所でした。

照明もあるし、なんだか安全に思えたのです。

そのうちに、ウトウトして二人とも眠ってしまいました。

ふと、誰かに見られている感じがして目が覚めました。

「?」視線は右から感じます。でも、彼女のお家の車は左ハンドル。

当然、友人はわたしの左側にいるはずです。

そっと目を開けて、右側に目を向けると・・・・

窓に小さな男の子のシルエットが張り付いています。

坊主頭に小さな手のひらをいっぱいに広げて、窓に張り付いているのです。

顔の大きさや、その背の高さから小学校2~3年生だと思いました。

とっさに出た言葉は「のぞかれてる!」

運転席の彼女はいきなりギアをドライブにすると、あろうことかハンドルを右に切ったのです。

小さな影はそのまま車の真下にすっと吸い込まれました。

「轢いちゃった!轢いちゃった!!引き込んじゃった!」喚くわたしに

「覗いてたやん!痴漢やん!」

瞬間、新聞の見出しが頭に浮かびました。

わたしたちの人生は終わったかも・・・・

我に返った彼女と車を降りて、泣きながら車の下を覗きましたが・・・

だあれもいないのです。

周囲に人家はなく、有刺鉄線で囲われた見晴らしのいい場所。

出口は一箇所。まっすぐに下につづく道は広々となんの影もありません。

「覗かれてたよね?」

「うん。子供だった。車の下に吸い込まれた」

「うん。目視でもサイドミラーでも見た・・・でも、こんな時間にあんな小さい子がいるかな?」

時計を見ると、もうすぐ12時・・・・

その時は、今起きたことよりも母が怖くて家路を急ぎましたが・・・・

あの子供は、一体なんだったのでしょう?