私が小さな時の話しです。

実家の裏には林が有り、小さな小川が流れています。

木が鬱蒼と立ち並び、昼でも暗く、小川があるからかじめじめして余り気持ちの良い所ではありません。

今はもう無いのですが、幼少の頃はそこに小さな家が立ち、おばあさんが一人で住んでました。

(交流はあったが、親戚といった類いでは無い)

幼少時の事なので記憶に無いのですが、いつからかそのおばあさんは亡くなり、

その家は取り壊され、その林に立ち入る事をきつく禁止されました。

実は小川を渡り林を抜けるとうちの畑があり、

整備された道路を通るより遥かに近く、禁止される前はそこを通り畑に行ってました。

少しして冬になり、ある日の朝、祖母がえらい剣幕で帰ってきました。

うちでは雪の下に白菜等を埋めて保存していたので、それを掘り起こしに行ってきたようです。

祖母が言うには、

畑に降り積もった雪の上にスイカ位の大きさの動物の足跡が点々と畑を囲んでいたそうです。

その足跡はとても妙で、四つ足で歩いた足跡では無く、一本足の様だと。

「あれは裏の婆さんに憑いてきたキツネだ!」と、祖母が言うのです。

私はおばあさんが亡くなった理由も聞かされていなかったので、母に何の話しか訊ねました。

母が言うには、裏のおばあさんは“拝み屋さん”だったというのです。

ある日“拝み屋”の仕事が入り、出掛けたのですが、余りも強すぎて祓いきれず、

逆にそのおばあさんに憑いてしまい取り殺されてしまったと。

亡くなる前に「とても強いキツネに逆にやられる」とうちの祖母に言い残していたそうです。

あれから20年以上経ちますが、未だに冬になると畑の上には大きな足跡があります。

これまで特にうちの家に影響はありません。

敢えて挙げるとすれば、その後私の片目が視力を無くし(ほとんど失明状態です)

裕福だった家が衰退していった事でしょうか…