カリ … カリ ・・…   カリ…

それは そうと 今が最高の瞬間なんだ。

俺は 俺というちっぽけな器から 解放サれたんだ。

明子 … 俺たちを引き離すものは もウ何もなイんだよ。

     カリ… カリ

明子。 おまえはいつも俺の為に一生懸命になってくれれる

カリ

俺もそれに答える ことにスるよ。

     カリ  カリ 

ああ、 やっぱりおまえはきレいだよ。 真赤なバラの花みたイ。     カリカリカリ カリ    カリ  ・…カリ

ほら そこらじゅうに 赤いバラの香りガ すル。そこらじゅうにだ。

カリカリカリ

聞こえるかい? ね、美しい旋律だろ?

ずっとずっと 作りたかった曲だよ。

やっと 完成したんだ。

これで完成するんだ。

1987年2月25日夜、

神奈川県藤沢市のアパートで発見された惨殺死体の傍らにいた二人の男女が 藤沢北署に逮捕された。

捕まったのはその部屋の住人で不動産業のS(39)と 主婦で看護婦のM子(27)。

殺されたのはM子の夫でコミックロックバンドのリーダーのAさん(32)と分かった。

Aさんはこのバンドでシングル2枚とLP2枚を出している。

1986年10月 AさんのいとこであるSがAさんに

「この世は悪魔でいっぱいだ」「救世の曲を作れるのはお前しかいない」と言い、

AさんとM子に「自分には神が降りた」と説き始めた。 AさんはM子と共にSの部屋で曲作りに没頭する。

異常な状況に事態を深刻に見たバンド仲間やAさんの両親が二人をSから引離そうとするが耳を貸さず、

2月20日 Aさんが「僕にも悪魔が取り憑いた。祓ってくれ」と言い出す。

2月22日、Sが悪魔祓いの儀式を始めた。

しかし悪魔が出て行かず、「肉体が死ねば悪魔も去る」として、M子に手伝わせてAさんを絞殺した。

その後2人は悪魔が再び乗り移らないように、3日間眠らずに死体を解体、切り刻んだ。

儀式の最中、救世の曲を流し続け、口ずさみながら…

25日夜 心配して尋ねてきたバンド仲間や両親が大家に合鍵で開けてもらった部屋は この世の地獄と化していた。

Sは丁度ナイフで頭蓋骨の肉を削ぎ、M子はハサミで足の肉を切っているところだった。

通報を受けた藤沢北署員が駆け付けても2人は一心不乱に作業を続けていた。

Sに懲役14年、M子に13年の実刑が下りた。