みなさんは「片足ピンザ」をご存知だろうか?

ピンザとは宮古島の方言で「やぎ」の意味である。

今回はそんな宮古島に古くから伝わる片足ヤギのお話…

6月…

梅雨の時期も終わり、いよいよ夏に入ろうとしてる時期の事。

とある学校では宿泊学習と言う名の学校行事が行われていた。

山の中にある少年自然の家にお泊まりするのである。

自然の家にバスで到着し、それぞれが割り当てられた部屋に荷物を置く。

そして、みんなでレクを楽しんだり、森の中を探検したり、

夕方になると、野外炊飯場でみんなでご飯をつくる。

メニューは定番のカレーライス。

「は?うわり人参かたくないか?」

「たかし~ちゃんと仕事しれよキチガイ!」

「やばっ!俺らのカレーうわりうまいかぁ」

*「うわり」とはかなりとかすごくという意味。

など、なんとも楽しそうな会話が聞こえてくる。

夕飯も終わり、宿泊学習のイベントの中で誰もが楽しみにしてる夜間ハイクの時間になった。

夜間ハイクとは、数名1グループで、森の中のコースをまわってくるといった、ようは肝試しみたいなものだ。

森に入る前に先生達が怖い話をする。

辺りもすっかり暗くなり、雰囲気も盛り上がってきたところで早速スタート。

5分おきに1グループづつ森に入る。

コースの途中では先生達がおどかすために待ち伏せ…

4つめのグループが森に入り、しばらく歩くと…



「っわ!!!」

「きゃー!!」

「うわー!!」

「おごえっ!!」

*「おごえ」とはとくに意味のない言葉。びっくりしたときとかに反射的にでてしまう。

うまく先生に脅かされたようである。

そしてまたしばらく進む…

「…」

「ん?何か聞こえない?」

「なにが?怖い事言うなよ!」

「いや、ほんと!ちょっと静かにしてみ?」



「……ェ…」

「は?まじで何か聞こえるし」

「なにこれ?」

「……ェ…」

声はどんどん大きくなる。それと同時になにやら地面を蹴るような音も聞こえる。

ザッ…ザッ…ザッ…

「…ェ…メェ~…」

ザッ…ザッ…ザッ…

「はっ?ヤギ?」

一人が後ろを振り向く

「うわ~~~~っ!!!!!!!」

そこには、

足一本でたっているヤギの姿があった。

みんなその姿を見て

「うわ~~~~~っ!!!!!」

「キャーーーーーー!!!!!」

「いやーーーーーーー!!!!」

「どんだけぇ~!どんだけぇ!」

みんなはいっせいに逃げだした。

みんなは一目見てそれが片足ピンザである事はすぐにわかった。

逃げるしかなかった…

逃げないといけなかった…

それはなぜか?

片足ピンザはすごく足が早い。

そして…

片足ピンザに頭の上をジャンプで越されると、魂を取られるというからである。

みんなは全力で走った。

が、片足ピンザは猛スピードで追いかけてくる。

ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ

メェ…

メェ…

ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ…

みんなの叫び声が森中に響き渡る。

「うわーーーーー!!!!!」

「キャーーーーー!!!!!」

「いやーーーーー!!!!!」

「どんだけぇ~!どんだけぇ~!いかほど~!」

どれくらい逃げただろうか?

無我夢中で走ったからか、みんなは自分がどこにいるのかわからなかった。

恐怖のあまり、みんなは泣いており、手足も傷だらけ。

膝もガクガクと震えており、たっているのがやっとの状態だった。

すると、目の前に大きな道路を発見した。

みんなはなんとかそこを通る車をつかまえ、どうにかその場から立ち去ろうとしたとき、

車の後ろの方になにやら白いものがすごい勢いで飛び込んできた。

それは紛れもない、

片足ピンザだった。

みんなの頭に再び恐怖が蘇る。

だが、今回はさすがに追ってはこなかった。

しかし、とても大きな声で

「メェェェエ"ェェェェー!!!!!!!!!!!」

と叫んで森の中に消えていった…

生徒たちは、先生達に起きた事を説明し、その時は夜間ハイクも中止になった。

だが、

今でもこの夜間ハイクは続けられている…

はたしてまたいつ片足ピンザの恐怖が襲ってくることやら…

みなさんも宮古に行くときは十分注意してくださいな。