専門学校のクラスメイトの桜庭さん(仮)から教えていただいた話しだ。

桜庭さんがまだ小学生の頃の話だというから、今から30年以上前の話になる。

桜庭さんは当時群馬県の富士見村に住んでいたのだそうだ。

桜庭さんの家の庭には林檎の木が一本生えていて、秋口になるとたわわに林檎の実をつけたという。

その林檎の木に、ある日から突然その人が現れるようになった。

桜庭さんが小学校から帰ってきて林檎の実を採ろうと林檎の木へ向かうと、枝に知らないおじさんがぶら下がっていた。

両腕、両足を枝に絡ませるようにしてぶら下がっていたそうだ。

驚いた桜庭さんが家に駆け込み、中にいた祖母にその話しをすると、一緒に行ってあげるからと、

祖母と連れ立って再び林檎の木の下にやってきた。

知らないおじさんは表情一つ変えず枝にぶら下がったままだ。

「あらー、わざわざ来てくれたんかい」

祖母は知らないおじさんを見るなり感嘆の声をあげた。

祖母が言うには、知らないおじさんは何もして来ないから心配はいらないという。

それから祖母はりんごのおじさんについて話をしてくれた。

実はこのおじさんは、祖母がここに嫁いで来る前の実家の庭にあった柿の木にもぶら下がっていた事があるそうだ。

初めこそ驚いたが、そのおじさんはただ木にぶら下がっているだけで何をしてくるわけでもない。

それどころか、何故かおじさんのぶら下がっている木には良く熟れた柿がたくさん実り、実に甘く、美味だったのだそうだ。

他に数本植わっていた柿の木が徐々に枯れていったにも関わらず、

おじさんの柿の木だけは元気なまま、毎年美味しい柿が採れたという。

桜庭さんが高校生になるまで、決まって実りの時期になると林檎の木におじさんが現れ、美味な林檎を実らせたという。

今はおじさんを見る事は無くなってしまったが、近年も桜庭さんの実家では毎年美味しい林檎が採れるのだそうだ。