これは俺、今同居している下のほうの妹の体験だ。
家の中には入って来ない、俺の母はそう言っていた。
だが、二人の妹はこの家の中で、何度か霊現象と思われる体験をしている。
下の妹は屁理屈で神経質で頭が良くて口が悪い。
その妹が真顔で語った。
金縛りとは、科学的根拠から証明できる事もある。
一般的に、脳が起きているのに体が寝ているという状態で金縛りは起こるのだという。
妹は、その体が寝ている金縛りというのには何度か経験があり、その感覚は良く知っていたという。
だがある晩の事だった。
妹はコタツで居眠りをする癖があり、その晩もコタツで熟睡していた。
寝ている妹を起こすのは容易ではない、押しても引いても叩いても起きようとはしない。
むしろ反撃をも被るほどだ。
例え俺が寝る時、まだ妹がコタツで寝ているのを見ても、もう諦めて起こさないようにしていた。
その晩、妹が目を覚ますと、どこか居間の空気がいつもとは違っていたという。
何かが、居間にいるような気がしたのだ。
夜中に祖母がトイレに起きるという事は良くあったが、祖母ではない、祖母ではない何かがいる気がする。
妹はゆっくりと体を起こそうとしたが・・・
体が動かない、いつもの金縛りとは何かが違う。
まるで何かに抑え付けられているような感覚だったという。
「これが本物の金縛りか!」
などと頭の中で思う余裕はあったというが・・・
体は動かないが目だけは動くので、居間の見える範囲を見回していると・・・
妹の寝ているすぐ横に、白い猫がいたのだ。
その時家では白猫は飼っていなかったし、まるで見たことの無い白猫だったという。
と、突然体を抑えていた力が無くなり、自由を取り戻して跳ね起きた時には、もう白い猫は跡形もなくいなくなっていた。
我が家では昔から大の猫好きで猫ばかり好んで飼っていたが、
田舎なせいか、野犬やタヌキ、カラスにやられてしまう事が多かった。
数えればどれだけになるかわからないが、そうやって死んだ猫達が家の敷地内を今でも歩き回っているとでも言うのか・・・
それにしても白猫は、どれだけ記憶を巡らせてもこの家で死んだ事がない。
いったい、白猫はどこからやってきたのだろうか?
そして妹に何をしたかったのだろうか?
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