これは何かを見たとか見ないとかいう話ではない。

あくまで音だけがするという話しである。

不思議な事にこの体験は俺と、上の妹が同じような経験をしていることから、話しとして取り上げてみる。

妹がまだ高校生の時分の話だった。

その頃妹は夜寝るのが遅く、夜中の2時3時に風呂に入るなど当たり前の生活を送っていた。

そしてその日も、妹が風呂に入ろうとしたのは2時を回った頃だった。

家族は皆寝静まり、風呂に入る妹の耳に入るのは、水道から水の落ちる音、自分が水を跳ねさせる音だけだった。

その日に限って、祖母のいびきすらも聞こえてこなかった。

随分静かな晩だったと言う。

ざっ・・・ざっ・・・

外から落ち葉を踏む音が聞こえる。

家の裏の道を、誰かがコンビニにでも行く為に歩いているのだろうと思っていたが・・・

何かおかしい。

よくよく考えれば裏の道はコンクリート舗装で、落ち葉を踏んでも沈み込むような音はしないはずだ。

それだけではない、音はかなりちかい場所から聞こえる気がする。

そう、風呂場の壁を隔てた、そのすぐ向こうを、何者かが行ったり来たりしている・・・

窓を開けて外を見る勇気など無く、妹はすぐに風呂を出ると、服をつかんでバタバタと二階の自室に転がり込んだ。

どろぼうかもしれないが、確かめるよりはまだ何か盗まれた方がマシと、妹はいつしか眠りについていた。

翌朝、オカンにその足音の話しをしたというが、

「あぁ、大丈夫。家の中には入って来れないよ」

と、オカンは何か引っ掛かる事を言ったそうだ。

この当時、俺は実家に住んでいなかったのでこの話を知らなかったが、

そんな俺も専門を卒業して実家に帰る事となった。

俺の部屋は母屋の横のプレハブだが、ある日の深夜、確か2時だかそこらだったと思うが、

部屋で音楽を聴いていたのだが、何か外で音がして、俺は音楽を一時停止した。

壁一枚隔てた外に耳を向けると、足音がする。

ザザァ・・・ザザァ・・・

引きずって歩いているような足音がハッキリ聞こえる。

さすがに薄気味悪く、しばらく様子を覗っていると、足音は部屋の周りを何度も何度も回っている。

ドロボウだったらここより母屋が大変だ。

部屋にある模造刀の一本を手に取り、俺は外を確認しようと思い、カーテンを少しだけ開いた。

相変わらず足音は聞こえている。

聞こえているんだが・・・

視界に何も入って来ない・・・

しばらくカーテンの隙間から外を凝視していたが、結局何かが現れるという事は無く、足音もいつしか聞こえなくなっていた。

この体験を妹に話してみたところ、先に話した妹の話が聞けたのだ。

しかし、あの足音は何だったんだろう。

妹は女だから、どこぞの変態が風呂場を覗こうとしていたのかもしれないと言え無い事も無いが・・・

俺の部屋の周りを回っていた足音には姿が無い。

耳がおかしく無い限りは、確実に目の前で足音がしていたのに、姿は何も見えなかった。

俺が足音を聞いたのはその一度きりで、それ以外の夜にそういった足音は聞いていないが・・・