これは俺が小学生の頃の話。

当時の俺の家は学校ととても近く、

家の横にあるフェンス一つを超えたらもう目の前は学校というような距離だった。

まぁ、危ないからってフェンスを越えて登校するのは禁止されていたんだけど。

それに出くわしたのは、その学校と僕の家を隔てていたフェンスの前でだった。

その日は夕暮れだったかな。

友達と学校で遅くまで遊んでて、門限だった5時を超えて6時になっていたんだ。

「やばい、母さんに怒られる」と思い、俺

は慌てて帰る支度をした。

そして時間も時間だったし、普段は禁止されていたフェンスを越えたんだ。

そこで、ふと何かの気配を感じて、後ろを

向いたんだ。

そこにはロングコートを着た男性が立っていた。

長身痩躯、片腕はフェンスに手を掛け、もう片腕に持っているのはガソリンタンク。

俺が凍りつくのを見ると、男は不敵に笑い、自らガソリンを浴びだした。

そうして、胸元からライターを取り出し、火をつけたんだ。

俺は咄嗟にフェンスから離れた。

けど、男性はそこから動こうともせずにただ、高々と笑いながら燃え続けていたんだ。

こっちを眺めながら、狂ったように。

結局僕はどうすることもできず、それを見続けていた。

それが燃え尽きるまで。

気がついた時には、自分の家の布団の中だった。

母さんの話によれば、庭で倒れていたらしい。

燃えた男の事を聞いたが、そんなモノは跡形もなかったそうだ。

怖々と確認に行ってみたが、燃えたような形跡もなかった。

結局、この事は僕がフェンスを越えて頭でも打って夢でも見ていたんだという事でまとめられた。

その家は一年くらいたって引っ越したが、学校には卒業まで通ってた。

だが、あれ以来あの男を見たことは無い。