じいちゃんが死んだときの話。

朝に息を引き取って、夕方…。

なんとなく妹と二人、じいちゃんの死に顔を見てたんだ。

まあじいちゃんには二人とも大分可愛がってもらったからね……。

それで、あたりが薄暗くなってくる頃…冬だったから5時前ぐらいかな?

じいちゃんの口の辺りが薄くぽうっと光ってるの。

なんだ?と思って見てたら、なんか蒼い光の玉みたいなのが口から出てきた。

それはそのまま窓ガラスを通り抜けて出て行っちゃったんだけど……。

あれが魂ってやつなんだろうなって、子供心に思った。

妹にも見えてたみたい。

んで、問題はその後なんだ。

それを見た後、30分経つか経たずって頃。

もうほとんど外は真っ暗になってたんだけど、不意に窓の外が明るくなったのね。

なんだろう?もしかしてじいちゃんの魂がまた戻ってきたのかも…なんて思った。

そしたら案の定、さっきと同じような光の玉が窓をすり抜けて入ってきた。

でも、さっきとなんか違うのよ。

色が……なんていうか、汚い黄色で、形も不安定にぐにゃぐにゃ変わってる。

それを見たとき、もう本能的にやばいと思って追い払おうとしたんだけど、

一足遅くて、それはじいちゃんの口の中に入ってしまった。

その瞬間、

「@#$%’&’”」
(意味不明な言葉の羅列)

みたいなうめき声をあげて、じいちゃんが息を吹き返した。

俺と妹はすげぇびびって、すぐに家族を呼びに行ったんだ。

まあその夜は大騒ぎだったね。

みんなじいちゃんが生き返ったって大喜びでさ。

…だけど、俺と妹は絶対近寄らなかった。

あれを見てたから。

家族の誰に話しても信じてくれなかったけど……生き返ったじいちゃんは、明らかにおかしかったし。

姿形はじいちゃんだけど、どう見ても、じいちゃんには……というか人間には見えなかった。

その夜。

目がさえてしまって、眠れなくて……たぶん12時は過ぎてたと思う。

ふと、何かを引き摺るような音が聞こえた気がした。

耳を澄ませて聞いてみると、確かになんかずるずる聞こえる。

なんだろう?と思ってドアを開けてみると、廊下の端になんかがうずくまってる。

よく見ると、それはじいちゃんだった。

びくっ…とひるんだ瞬間、手に持ってた漫画を落としちゃって……。

そしたら、それに気づいたのか、じいちゃんが這って(四つん這いじゃなく腹這いで)近付いてきた。

「うわっ!」

と声を上げてドアを閉めたもんだから、妹も目を覚まして、

「どうしたん?にいちゃん」

なんて気楽に抜かしやがる。

「あほ!じいちゃんが来たんや!入ってこんようにお前も押さえるの手伝え!」

そしたら妹も必死になって、二人でドアを押さえつけた。

外からは、がりがり引っかく音がずっとしていた。

結局、外が薄明るくなるまで音は続いて、またずるずる音が遠ざかっていって……。

そこでようやく妹と二人目を合わして、ほっと一息ついた。

んで次の日(正確には同日なんだが)の朝。

ドアを見てみるとやっぱり散々引っかいた跡が残ってる。

…というか爪が一枚、剥がれて刺さっていた。

ぞっとしつつ、改めて昨日のは夢じゃなかったんだと思ってたら、

「おーい!T(俺)!ちょっときぃ!」

と外からお呼びが。

なんだろうと行ってみると、家族全員が庭に集まって大騒ぎしてる最中だった。

その輪の中心にはじいちゃんの遺体。

話によると、兄貴が朝体をほぐそうと外に出たときにはもう庭で冷たくなっていたらしい。

家族はみんな不思議がった。
(死体が生き返るのも十分不思議だが)

なにせ、じいちゃんが死ぬ間際は満足に体も起こせない状態だったから、どうやってここまで?ってことで。

俺と妹はなんとなく知ってたわけだけど……まあ、話しても案の定信じてもらえなかったわな。

で、そのあとじいちゃんの遺体は一応医者に見せて、改めて通夜をやったんだけど、

そのときの医者の言葉がどうも引っかかるんだわ。

「死んでから何日目ですか?」

って。

なんでも、死んで一日ではありえないほど腐敗が進行してたらしい。

これはどういうことなんだろう?

ほんとはじいちゃんは何日か前に死んでいた?

それともあれが入ったからそうなったのだろうか……。

まあ、今となっては何が真相なのかなんてわからんけど。

あ、ちなみに、お通夜の最中にじいちゃんが再び生き返ることはもうありませんでした。