近所に十柱神社と言うのが有る。

十柱というのは、普通、十体の土木の神様を祭っているので

十柱らと呼ばれているそうだが、不思議な事に

その近所の十柱神社では九体の神様は解っているのだが、

十体目の神様の記載が何処にも無い。

卒論の研究で、民俗学のフィルードワークをしたとき

出会った地元の翁が、ふとこんな事を言った。

「十柱さんは「火」を嫌うんですさ」

思わず聞き返した。

「どうして「火」を嫌うのですか?」

「昔から「ひ」は遠ざけていたのです。工事の衆もおることですから」

そう言って翁は言葉を濁した。

大学に戻ってこの事を教授に話してみた。

教授は鼻を鳴らして言った。

「君は土木工事に奉られるご神体って、何か知っているかい?」

「さぁ何ですか?」

「「とはしら」神社が何故「ひ」を遠ざけるのか?

それは禍々しい出来事の「音」をひたすら隠すためではないかな」

「…!!それが解らなかった十柱目の神様だったのですか!」

「十柱目の神は、常に入れ替わったっていたのかもしれないねぇ」