クラスメイトの池上さんから聞いた話だ。

20歳頃に前述の霊体験で彼女を亡くした池上さんはしばらく彼女を作れないでいた。

そんな池上さんが新しい彼女、大西さん(仮)を迎えたのが25歳の時だった。

池上さんと付き合って二ヶ月が経ち、ある日大西さんの住むアパートに訪ねて行った時の事、

大西さんは池上さんの前にある物を差し出した。

それは焼け焦げて変形した、辛うじてネックレスとわかるものと指輪だったという。

それを前に、大西さんは池上さんにこのような話をしたそうだ。

池上さんと付き合う前、大西さんには二年付き合っていた婚約者がいた。

大西さんとの婚約の際、彼氏はプレゼントとしてネックレスと指輪のセットをくれたのだという。

大西さんはそれを肌身離さずいつも身に着け、彼と早く結ばれる日を楽しみにしていたのだが・・・

彼は事故に遭い、他界してしまった。

明るい未来が手の届くところまで近づいていたのに、大西さんは全てを失ってしまった。

彼の葬儀の際、大西さんは彼からもらったネックレスと指輪を外し、

せめて寂しくないように一緒に持っていってとお棺に入れ、彼を見送ったそうだ。

それから月日は過ぎ、彼の一周忌がやって来た。

いまだ亡くなった彼の事を忘れられずに、大西さんは悶々とした思いで彼の墓前で手を合わせたのだが・・・

その晩、寝室で寝ようとしていた大西さんの耳に、ドアをノックする音が聞こえた。

こんな時間に誰が来たのかと思い、

大西さんが玄関の覗き窓を覗くとそこには誰の姿もなく扉も開けて外廊下も確認したがやはり人影はなかった。

聞き間違いかもしれない、そう思い寝室に引き返す大西さんは、思わず息を呑んだ。

寝室のベッドに腰掛ける人影、それは一年前に亡くした『彼』だったのだ。

呆然とする大西さんを目の前に、彼は「先に逝ってしまってごめん」と頭を下げたという。

そして大西さんに握りこぶしを差し出した。

大西さんが手の平を出すと、彼は大西さんの手に何かと渡した。

それは焦げたネックレスと指輪。

少し形は崩れているが、それは大西さんが彼のお棺に入れたものと良く似ていた。

彼は言った。

俺はもうおまえを守ってやる事ができない、だから、それはおまえに返す。

新しい恋をするんだ。

そして最後に、彼はありがとうと深く頭を下げると溶けるように姿を消したという。

大西さんは涙が止まらなかったそうだ。

この話しを聞いた池上さんは大西さんの亡き彼氏に感服し、

同時にこんな自分が彼女を本当に幸せにできるのかと悩み、結局大西さんとは別れてしまったのだという。