現在東京に在住している、友人のSから聞いた話しだ。

Sの祖父は一昨年の11月に亡くなった。

ヘビースモーカーらしく、肺癌が原因だったという。

ずっと同居で、おじいちゃん子だった彼にとって祖父の死は耐え難い程に大きく、

ショックのあまり一週間仕事も休んでしまったのだそうだ。

Sは祖父の死を悼み、毎日欠かさず遺骨の安置された祭壇に手を合わせ、日々の状況を報告していたのだという。

暇さえあれば祭壇の前に座り、祖父の遺影を眺める日々。

そして迎えた納骨の日なのだが、彼は体調を崩し、納骨に参加する事ができず、家で寝ている事となった。

大好きな祖父と、最後の別れである。

もちろん彼はムリを押してでも納骨に行きたかったが、家族に止められ渋々寝ている事となったのだ。

家族や親戚が家から出発し、家には留守を任された近所の知り合いと、Sの二人だけとなった。

Sは自室の布団の中で祖父の事を思い出していた。

両親共働きだったせいもあり、家でもっとも一緒の時間を過ごした祖父との思い出は楽しい事ばかりではなかったが、

思い返すだけで再び、祖父を失った悲しみがこみ上げてきて、Sは布団を頭から被り、泣いていたのだという。

「どうしたS、何を泣いとる?」

突然、声が聞えた。

忘れもしない、これは亡くなった祖父の声だ。

驚いて布団から頭を出すと、布団の横に、生前とまるで同じ姿の祖父があぐらをかいて座っていた。

あまりに平然とそこにいる祖父に、恐れはなかったという。

「どうしたん爺ちゃん」

Sが搾り出すように聞くと祖父は笑いながら言った。

「おれぁもう行かねぇとなんねんさ。

Sがあんまりにも情けねぇから、行くめぇにちっとんばい寄ってみたんさ」

Sは何も言えないでいたそうだ。

何か言葉にしてしまえば絶対に泣くと思ったという。

「しっかりやれよ」

祖父はその一言を最後に、解けるように消えたそうだ。

それ以来、祖父を見る事は一度としてなかった。

話している途中で、Sは何度も涙を浮かべて言葉に詰まっていた。

最後の言葉は今でも耳にしっかり残っているという。