Kは自分の部屋で眠剤やクラブで仕入れたであろうドラッグを
大量にチャンポンして服用して死んでいた。
Kの部屋は無茶苦茶に荒れ果てていたらしい。
Kの死を聞いた翌日、変な夢を見た。
KとSEXをしている夢。Kは気持ち悪いぐらい満足そうな恍惚な顔をしていた。
するといきなり目の前が暗くなって「死ぬってSEXより気持ちいいよ。」と聞こえた。
そこで目が覚めた。僕は我ながら「なんて夢見てんだよ・・。俺はアホか」
と思ってうなだれた。目が覚めたのは仕事より6時間も前、
再び寝ようと思ったが寝つけなかったので、しばらく部屋のサンドバックを叩いていた。
すると、トイレからゴボゴボゴボッ!!と激しい水音が聞こえ、
次の瞬間バァン!!!と凄まじい音が玄関のドアから聞こえた。
「なんだ!!?」と思って玄関のドアを開く。誰もいない。
ドアには大男が殴ったかハンマーで殴ったような跡があった。

「誰だ・・!!?」と思ってマンションの下まで降りた。
しかしそれらしき人はいない。
「誰かに恨み買うようなマネしたか・・・?Kの友達・・?」
等と考えつつ部屋に戻ろうとした。が、ドアが開かない。
というより、ドアノブが強い力で押さえられている。
力には相当自信がある。が、びくともしない。
「誰だ!開けろよ!!」と怒鳴った。すると力がふっと抜けて、ドアが開くようになった.
警戒しながら玄関に入る。
「どんな奴だよ・・・。見つけたとしても勝てんのか・・・?」と考えていた.
空手のみならず格闘術全般にかなりの自信はあった。それでも不安があった。
とりあえず部屋を見渡し、トイレ、風呂、ベランダを調べた。
1ルームマンションだ。もう隠れるところなんてない・・・。
ベランダから逃げたのか?そう思い部屋に戻るとサンドバッグがグラグラ揺れている。

「なんで揺れてる?」と思った瞬間、
急に強烈な嘔吐感や立ちくらみがして、膝をついてしまった。
前を見ると揺れるサンドバックから異様な程の埃が舞っている。
加えて頭痛もひどくなり、意識を保つのも困難だ。
「なんだこれ・・・やばい・・。今さっきの奴が来たら・・。」
と思い玄関に鍵を閉めに這って行った。
玄関にはKがいた。キャミソールのような下着姿だった。

Kは僕を見下ろしている。とても冷たい目だった。
僕はゾッとしながらも「なんだよ・・・。幻覚か・・・?」と
無視して玄関の鍵を閉めようとした。
すると力がふっと抜け、玄関に仰向けに倒れてしまった。

Kが僕に顔を近づける。「動け!クソ!体動け!」と必死に
意識を保ち体を動かそうとするが、動かない。Kの手が僕の顔を撫でる。
しばらく撫でられ、次は顔に顔を近づけてくる。
顔中、そして首を舐め回す。 認めたくないが、
全身の力が抜けてもうどうでもよくなってしまいそうな感覚になってしまう。
なにを考えたのか、顔を舐めているKと目が合った僕は
「・・・・なんか言えよ。」と言った。Kは少し笑って行為を続けた。

「やばい。このままじゃやばい。」と思って
体中の力を振り絞って
「ああああああああああ!!!!!」と吼えながら僕は上体を起こした。
Kの姿は消えていた。体も言う事を聞いてくれた。
「・・・・なんなんだよ・・・・。」と言いながら
ドアにもたれ崩れる。するとドアの向こうから
「ムカつく」と言う声がはっきり聞こえた。
「なんなんだよもう・・・・!」と思いながらドアを開けた。誰もいない。
これが1月頃の話。これから一か月くらいは地獄だった。

分かりました。
 
次の日、彼女にこんな事話して不安にさせるわけにもいかず、
一番信頼できる人、彼女の父親(オーナー)にこの事を話した。
「夢じゃないのか?」僕は「あれは夢じゃないですね。」と言った。
オーナーは「んーー・・・。」と困った顔をしていた。
それを見て、「まぁ、もう大丈夫だと思いますよ。うん。大丈夫です。」と
話を終わりにした。
それから5日後、休日だった僕は深夜、走りに出かけた。
10キロくらい軽く走って、そろそろ折り返そうかと思っていると、
急に背中を蹴られたような衝撃が走って、僕は前のめりに手をついた。
「誰だ?」と思って後ろを振り返ると、誰もいない。
というか人気のないところだ。だれもいるはずがない。

「・・・?」と思って前を見ると、10メートルくらい先に、小柄な男が立っていた.
「こいつじゃないよな・・?」と思いつつも
ここを早く離れようと思い、その男に声をかけた。
「あの、なんか変な男がこの辺りいるみたいなんで、早く離れましょう。」
反応がない。心なしかすこし揺れている。
「あの・・・」と近寄るとその男はドラッグでキまったような顔をしている。
片目がほとんど閉じて片目が半開きで白目を向いている。
さすがにギョッとした。僕はそのままその男を通りすぎて走った。
すると急に左腕をとんでもない力でにぎられた。振り向くとさっきの男がいる。
ものすごく痛い。腕が握りつぶされそうだった。

「なんだよ・・・!はなしてください・・・!」男は反応がない。表情も変わらない。
僕はやむを得ずその男の脇腹に蹴りを入れた。
男は「ぎぁぁぁぁぁぁ!!」と叫んで脇腹を押さえて倒れ
足を狂ったようにバタバタさせている。「まずい」と思い
「すいません!大丈夫ですか!?」と近づくとまた強烈な力で、
左腕の同じ箇所を握りつけてくる。僕はびっくりしたと同時に
その男を右手で殴りつけた。男は言葉にならないような叫び声をあげ倒れる。
「なんなんだよもう!!」と思いながら猛スピードで走って逃げた。
気がおかしくなりそうだった。

腕をつかんできた男から逃げてマンションにようやく戻ってきた。
部屋に戻り「クソ・・・・」と言いながらベッドに倒れこむ。
気を紛らわそうと思い、彼女に電話して気を紛らわせようとした。
幸いまだ起きていて、しばらく話した。
話していると、またトイレからゴボゴボゴボッと音がして、
ドアを強烈な力で叩く音がした。「何の音!?」彼女が驚いている。
「・・・変な奴がいるのかも。ゴメンまた後で掛け直すから.」といった。
「ちょっとやだ危ないって!!鍵かけて部屋でいなよ!」彼女がいうが、
「大丈夫。」といって切った。もちろん大丈夫じゃない。

でも鍵をかけて部屋でいてなんとかなるもんじゃないというのはなんとなくわかった。