889 866 sage 2005/10/14(金) 16:52:27 ID:c2L+VjQX0
とりあえず、僕と爺ちゃん、婆ちゃんで、隣のKの家に行くことになりました。
爺ちゃんは、出かける前にどこかに電話していました。
何かあってはと、父も行こうとしましたが、母と一緒に留守番となりました。

Kの家に入ると、今までかいだことのない嫌なにおいがしました。
埃っぽいような、すっぱいような。
今思うと、あれが死臭というやつなんでしょうか?
「おい!K!!しっかりしろ!」
奥の今からは、Kの父の怒鳴り声が聞こえていました。
爺ちゃんは、断りもせずにずかずかとKの家に入っていきました。
婆ちゃんと僕も続きました。

居間に入ると、さらにあの匂いが強くなりました。
そこにKが横たわっていました。
そしてその脇で、Kの父ちゃん、母ちゃん、婆ちゃんが
(Kの家は爺ちゃんがすでに亡くなって、婆ちゃんだけです)
必死に何かをしていました。

Kは意識があるのかないのか、
目は開けていましたが、焦点が定まらず、
口は半開きで、泡で白っぽいよだれをだらだらと垂らしていました。

よくよく見ると、みんなはKの右腕から何かを外そうとしているようでした。
それはまぎれもなく、あの腕輪でした。
が、さっき見たときとは様子が違っていました。


890 866 sage 2005/10/14(金) 16:54:36 ID:c2L+VjQX0
綺麗な紐はほどけて、よく見ると、ほどけた1本1本が、Kの腕に刺さっているようでした。

Kの手は腕輪から先が黒くなっていました。
その黒いのは、見ていると動いているようで、まるで腕輪から刺さった糸が、
Kの手の中で動いているようでした。

「かんひもじゃ!」
爺ちゃんは大きな声で叫ぶと、何を思ったかKの家の台所に走っていきました。
僕は、Kの手から目が離せません。
まるで、皮膚の下で無数の虫が
這いまわっているようでした。

すぐに爺ちゃんが戻ってきました。
なんと、手には柳葉包丁を持っていました。
「何するんですか!?」
止めようとするKの父ちゃん母ちゃんを振り払って、爺ちゃんはKの婆ちゃんに叫びました。
「腕はもうダメじゃ!まだ頭まではいっちょらん!!」


891 866 sage 2005/10/14(金) 16:56:19 ID:c2L+VjQX0
Kの婆ちゃんは泣きながら頷きました。
爺ちゃんは少し躊躇した後、包丁をKの腕につきたてました!
悲鳴を上げたのはKの両親だけで、Kはなんの反応も示しませんでした。

あの光景を僕は忘れられません。
Kの腕からは、血が一滴も出ませんでした。
代わりに、無数の髪の毛がぞわぞわと、傷口から外にこぼれ出てきました。
もう、手の中の黒いのも動いていませんでした。

しばらくすると、
近くの寺(といってもかなり遠い)から、坊様が駆けつけて来ました。
爺ちゃんが電話したのはこの寺のようでした。

坊様はKを寝室に移すと、一晩中読経をあげていました。
僕もKの前に読経を上げてもらい、その日は家に帰って、眠れない夜を過ごしました。


892 866 sage 2005/10/14(金) 17:00:31 ID:c2L+VjQX0
次の日、Kは顔も見せずに、朝早くから両親と一緒に帰って行きました。
地元の大きな病院に行くとのことでした。

爺ちゃんが言うには、腕はもうだめだということでした。
「頭まで行かずに良かった」と何度も言っていました。
僕は「かんひも」について爺ちゃんに聞いてみましたが、教えてはくれませんでした。

ただ、「髪被喪」と書いて「かんひも」と読むこと、あの道祖神は「阿苦(あく)」という名前だということだけは
婆ちゃんから教えてもらいました。

古くから伝わるまじないのようなものなんでしょうか?
それ以来、爺ちゃんたちに会っても、聞くに聞けずにいます。

誰か、似たような物をご存知の方がいらっしゃいましたら、教えていただけるとありがたいです。
あれが頭までいっていたらどうなるのか・・・?

以上が、僕が「かんひも」について知っているすべてです。
失礼しました。



129 本当にあった怖い名無し sage New! 2005/10/16(日) 20:55:25 ID:p7i1wmxX0

こんばんは。
前スレの「かんひも」の866です。
大勢のみなさんにお気に召していただいて、ありがとうございます。
でも、みなさん「かんひも」についてはご存知ないようですね。

僕も、書き込んでから、改めて気になり、この土日で、母の実家まで行って、自分なりに調べてみました。
残念ながら、爺ちゃんはすでに亡くなっているので、文献と、婆ちゃんの話からの推測の域をでませんが・・・
この年になって、久しぶりに辞書を片手に、頑張ってしまいました。

結論から言うと、
どうやら「かんひも」はまじない系のようです。
それも、あまり良くない系統の。

昔、まだ村が集落だけで生活していて、他との関わりがあまりない頃です。
僕はあまり歴史とかに明るくないので、何時代とかはわかりませんでした。

その頃は、集落内での婚姻が主だったようで、やはり「血が濃くなる」ということがあったようです。
良く聞くように、「血が濃くなる」と、障害を持った子供が生まれて来ることが多くありました。
今のように科学や医学が発達していない時代。
そのような子たちは「凶子(まがご)」と呼ばれて忌まれていたようです。
そして、凶子を産んだ女性も、「凶女(まがつめ)」と呼ばれていました。