わたしが恐る恐る電気釜に近づいていくと、泣き声がふと止みました。
ひょっとして生徒が子猫を閉じこめたのかもしれない、そんないたずらをする生徒がいるなら作品についた手の跡も納得できる。
わたしはいたずらの正体を見破るべく、電気釜のフタを開け、紙くずを拾い出しました。
美術室に響く紙の音は気持ちのいいものではありませんでした。
手に取れるゴミは拾い出しましたが、猫など見あたりません。
電気釜の底の方には乾いた砂が溜まっていました。
わたしは砂に手を突っ込み、中を探りました。
指先に手応えがあるので取り出してみると、それは骨でした。動物のもののような骨、わたしは恐くなり、それ以上手を突っ込むことはできず、美術室を飛び出しました。
翌日校長にこの出来事を話したところ、「すべてこちらで対応するから他言しないように」と強く言われました。その後聞くところによると、わたしが転勤する前、不倫の末妊娠し退職した美術の女教師がいたということでした。
その人は、現在消息不明だということです。
あの小さな手の跡と赤ん坊の泣き声は、一体何だったのでしょうか?
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