902 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:52:13 ID:wohjQNUp0
これを書いたら、昔の仲間なら俺が誰だか分かると思う。
ばれたら相当やばい。まだ生きてるって知られたら、また探しにかかるだろう。
 でも俺が書かなきゃ、あの井戸の存在は闇に葬られたままだ。だから書こうと
思う。文章作るの下手だし、かなり長くなった。しかも怪談じゃないから、興味
の湧いた人だけ読んで欲しい。


 今から数年前の話。俺は東京にある、某組織の若手幹部に使われてた。Nさんっ
て人。今やそういう組織も、日々の微妙にヤバい仕事は、アウトソーシングです
よ。それも組織じゃなく、個人が雇うの。警察が介入してきたら、トカゲの尻尾
切りってやつね。

その代わり金まわりは、かなり良かったよ。俺は都内の、比較的金持ちの日本人、
外国人が遊ぶ街で働いてた。日々のヤバい仕事っていうと、すごそうだけど、実
際に俺がやってたのは、ワンボックスで花屋に花取りに行って、代金を払う。
その花を俺がキャバクラから、高級クラブまで配達する。キャバクラ行くと、必
ず花置いてあんだろ?あれだよ。で、花配りながら、集金して回る。

 もちろん花屋に渡した代金の、3~5倍はもらうんだけどね。3万が10万、5万が
25万になったりするわけよ。月に3千万くらいにはなったね。

 俺がやるヤバい仕事ってのは、最初はその程度だった。それでも結構真面目に
やってた。相手も海千山千のが多いからさ。相手が若僧だと思うと、なめてかかっ
て、値切ろうとするバカもいるんだよね。

 その度に暴力沙汰起こしてたんじゃ、仕事になんないわけだ。起こす奴もいる
けど。でも警察呼ばれたら負けだからね。次から金取れなくなるから、組から睨
まれる。タダじゃすまんよ。

 そういう時、俺は粘り強く話す。話すけど、肝心なトコは絶対譲らない。一円
も値切らせないし、ひとつの条件もつけさせない。



903 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:54:00 ID:wohjQNUp0
 前置き長くなったけど、まあうまくやってるってんで、Nさんの舎弟のSさん、Kさ
んなんかに、結構信頼されるようになった。

 それで時々花の配達に使ってるワンボックスで、夜中に呼び出されるようになっ
た。積んでるのは、多分ドラム缶とか段ボール。荷物積む時は、俺は運転席から
出ない事になってたし、後ろは目張りされてて、見えないから。

 それでベンツの後ろついてくだけ。荷物を下ろしたら、少し離れたところで待たさ
れて、またベンツについて帰って、金もらって終了。

 何を運んでたなんて知らない。その代わり、1回の仕事で、花の配達の1ヶ月分
のバイト代をもらえた。

 ある夜、また呼び出された。行ってみると、いつもとメンツが違う。いつもはSさん
かKさんと、部下の若い人だった。ところがその日は、幹部のNさんがいて、他には
Sさん、Kさんの3人だけ。

 3人とも異様に緊張してイラついてて、明らかに普通じゃない雰囲気。俺が着いて
も、エンジン切って待ってろって言ったまま、ボソボソ何か話してた。
「・・・はこのまま帰せ」
「あいつは大丈夫ですよ。それより・・・」
途切れ途切れに会話が聞こえてたけど、結局俺は運転していく事になった。何だか
嫌な予感がしたけどね。

 後ろのハッチが開いて、何か積んでるのが分かった。でも今回はドラム缶とか、段
ボールじゃなかった。置いた時の音がね、いつもと違ってた。重そうなもんではあった
けど。

 更に変だったのが、SさんとKさんが同乗した事。いつもは俺一人で、ベンツについ
てくだけなのに。しかもいきなり首都高に入った。あそこはカメラもあるし、出入口には
Nシステムもあるから。こういう仕事の時は、一般道でもNシステムは回避して走るのに。



904 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:54:47 ID:wohjQNUp0
 首都高の環状線はさ、皇居を見下ろしちゃいけないとかでさ、何ヵ所か地下に入るよ
ね。恥ずかしながら、俺は運転には自信あるけど、道覚えるのは、苦手なんだよね。方
向音痴だし。

 多分環状線を、2周くらいしたと思う。車が途切れたところで、突然Nさんが乗るベンツ
が、トンネルの中で、ハザード出した。

 それまでSさんもKさんも、ひと言もしゃべらなかったけど、Sさんが、右の車線に入って
止めろって。言われるままに止めたよ。そこって合流地点だった。で、中洲みたいになっ
てるとこに、バックで車入れろって言うから、その通りにして、ライト消した。

 両側柱になってて、普通に走ってる車からは、振り返って見たとしても、なかなか見つけ
られないと思う。まあ見つけたとしても、かかわり合いにならない方が良いけどね。Nさん
が乗ったベンツは、そのまま走り去った。

 SさんとKさんは、二人で荷物を下ろしてたけど、俺にも下りて来いって。俺はこの時も、
嫌な予感がした。今まで呼ばれた事なんて無かったし。

 SさんとKさんが、二人で担ぎ上げてるビニールの袋。映画とかでよく見る、死体袋とか
いう黒いやつ。もう中身は、絶対に人間としか思えない。



905 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:55:26 ID:wohjQNUp0
 とんでもない事に巻き込まれたって思って、腰が痛くなった。多分腰抜ける寸前だったん
だろう。何で組の人じゃなくて、俺なの?ってその時は思ったけど、その理由も後になれば
分かったんだけど。

 で、Sさんがポケットに鍵があるから、それ使って、金網の扉の鍵開けろって言うから、言
う通りにした。金網開けて、5~6メートルで、また扉にぶつかる。扉というより、鉄柵って感
じかな。だって開ける為の把手とか無いし、第一鍵穴すら見当たらない。

 どうすんだろうな~と思ったら、またSさんが別のポケットを指定。今度は大小ひとつずつ
の鍵。コンクリの壁にステンレスの小さい蓋が付いてて、それを小さい方の鍵で開ける。中
に円筒形の鍵穴があって、それは大きい方の鍵。それを回すと、ガチャって音がして、柵が
少し動いた。

 右から左に柵が開いた。壁の中まで柵が食い込んでて、その中でロックされてる。鍵を壊
して侵入は、出来ない構造らしい。

 更に先はもう真っ暗。マグライトをつけて先に進んだけど、すぐに鉄扉に当たった。
『無断立入厳禁 防衛施設庁』って書いてあった。これは不思議だった。だってここ道路公
団の施設だよね?

 ていうか、こんなとこ入って、平気なのかなって思った。まあこの人たちのやる事だから、
抜かりは無いとは思うんだけど、監視カメラとかあるんじゃないのって、不安になった。まあ
中に進んだら、もっと不思議なもんが、待ってたんだけどね。鉄の扉も、さっきの鉄柵と同じ
要領で開いて、俺たちは中に入った。



906 本当にあった怖い名無し 2008/01/21(月) 00:56:30 ID:wohjQNUp0
 SさんもKさんも、うっすら汗かき始めてて、随分重そうだったけど、運ぶの手伝えとは言
わなかった。中に入るとすぐ階段で、ひたすら下に下りて行った。結構下りた。時々二人が
止まって、肩に担ぎ上げた「荷物」を担ぎ直してた。

 階段を下りると、ものすごく広い通路が、左右に伸びてた。多分幅10mくらいあったと思う。
下りたところで、ひと休みした。通路はところどころ電灯がついてて、すごく薄暗いけど、一応
ライトは無しで歩けた。俺たちは反対側に渡って(って言いたくなるくらい広い)、左手に向かっ
て進んだ。

 時々休みながら、どれくらい進んだかな。通路自体は分岐はしてない。ひたすら真っ直ぐで、
左右の壁に時々鉄の扉がついてる。ある扉の前でSさんが止まって言った。
「これじゃねえか。これだろ」
そこには『帝国陸軍第十三号坑道』そう書いてあった。字体は古かったけど。信じられる?今
の日本にあるのは、陸上自衛隊でしょ。何十年も前のトンネルなのか、これは?

 SさんもKさんも、汗だくで息も荒くなってたから、扉を入ったところで、また「荷物」を下ろして、
休憩する事にした。二人とも無言だったから、俺も黙ってた。

 しばらくして、Sさんがそろそろ行こうって言って、袋の片側、多分『足』がある側を持った。そ
したら・・・

『袋』が突然暴れた。Sさんは不意を突かれて、手を放してしまい、弾みで反対側の袋の口から、
顔が出てきた。猿ぐつわを噛まされた、ちょっと小太りの男。