それは夜に塾講師のバイトに行った時でした。

その日は、春期講習も終わって通常授業も明日から始まるっていう、

春期講習と通常授業の境目みたいな授業が何もない日で、

俺は2人の生徒を相手にした個別授業をやる予定で、教室には俺と塾長と生徒二人だけという状況でした。

その個別授業が始まって少し経って、塾長は自分の仕事が終わり、後は古釜の俺だけが残っていたので

「じゃぁあとは鍵閉めておいてね」

という感じで帰っていきました。

授業は問題なく終わり、片方の生徒は帰って、もう片方の女子生徒の宿題を見てやる事になり、それも無事に終わった。

授業の後は、本来生徒は入ってはいけないんだけど、講師控え室に招き入れて

「誰もいないからいいよねww」

とかいいながら、講師用の差し入れを冷蔵庫から出して食べてたりしました。

生徒と談笑をしながら、俺は今日の授業報告書をパソコンに入力しなければならないので、片手間にパソコンを入力する。

そして、まだその作業も終わらない22時頃、生徒が「じゃぁ帰ります♪」と言って、

それに俺が「おう、気をつけて帰れよ」と応えた瞬間です・・・



チン・・・

ガラー・・・



講師室から見える所にあるエレベーターが突然開きました。

誰も降りてこない。

その瞬間に、なんか「ゾクッ」っとする冷たい空気が部屋を包んだ感じがして、そして生徒も同じ事を感じたらしく、

生徒はエレベーターに向かおうとした体勢のまま、俺はパソコンの前に座りながらエレベーターの方を見る体勢のままの、

二人で顔を目合わせて固まっちゃいました。

エレベーターは講師室から見るとちょっと奥まった位置にあって、扉が開いたのは確認できるんだけど、

角度の関係で中まで確認ができない位置にあるのです。

ここはビルの4階にあって、他の階に別の会社の事務所なんかもあったりするんですけど、

普段こんな遅くまで開いてないし、後で確認したけど、やっぱりその日は他の事務所はすでに閉まっていました。

そしておかしな事に、エレベーターの扉は開いたままで、下に下りて行かないんです。

ドキドキしながらも、もし保護者だったらという事を考え、講師室から大きめな声で

「どちら様ですか?」

とエレベーターに向かって尋ねてみるものの、返事はなく、まだ扉は開きっぱなし。

意を決して俺が確認しに行こうとしたら、

生徒はなんかもう「え、なんかこわいよ・・・」とか言いながら俺にしがみついてきて、

「大丈夫だよ」とか言いながら、内心俺もそれが助けになってたりして、エレベーターに2人で向かったんです。

そしてエレベーターの前に着くか着かないかの位置に来た瞬間・・・



講師室の電気がいきなり消えやがった!!



授業が終わった時点で教室や廊下の電気は全部消していて、講師室の電気だけ点けていたのでフロア全体が真っ暗!!

報告書を書いていたパソコンの画面だけが青く光っていました。

生徒も「キャーーーー!!何!?何!?」

とか言い出して、更に腕にしがみついてくるんだけど、逆にそれが俺の恐怖心を煽って、もうこの時点で半泣きです。

心臓とか鼓動が聞こえてくるんじゃないかっていうぐらいドッキンドッキンいってるし、変な冷たい汗が出てくるし。

そしてかろうじて見つけた講師室の電気つけて、「もう早く帰ろう」って事になり、俺も生徒について出る事にしたんです。

速攻で帰り支度。

その支度の早いこと早いこと

多分10秒ぐらいで全ての荷物をバッグに入れました。

報告書も終わらせなくちゃいけないんけど、「もう今度でいいや!」って思って、

報告書を書いてたパソコンを閉じようと、モニターを見た時です。

報告書はエクセルを使ってるんですけどね、俺が打ち込んだ文字が当然いっぱいあるわけです。

その一番上に、文字が打たれてました。



さむいの



って!!!!!!!!!!!!!

それを見た瞬間、全身に鳥肌が立ちまくって、せっかく書いたデータも上書き保存せず、

一刻も早くここから出たいがために、クリック連打して、足早にその場をあとにしました。

講師室を出る時、エレベーターの扉はまだ開いたまま。

エレベーターは使わずに、中は見ずに、階段を駆け下りて道路へと出ました。

塾のすぐ前は人と車が行き交う大通りで、外に出てこんなに

「ほっ」

とした感覚を得たのは初めてでした。

そして生徒とは駅まで帰り道は一緒だったんで、

「なんだったの今の~」

とかいいながら帰っていったけど、あのモニターの文字の事だけは教えませんでした。

更に恐怖を与えるだけなので。

それ以来、他に講師がいない夜に授業を行なう事は二度としていません。



あまり怖くはないかもしれませんが、俺が今までで体験した唯一の恐怖実体験です。