医療機関には、ホットライン制度と呼ばれる約束事があります。

これは、ある殺人事件が、きっかけとなりできたものです。

ずっと以前、喧嘩の仲裁に入った大学生の青年が、ナイフで刺されてしまった事件がありました。

ナイフで刺された青年は救急車で運ばれたのですが、

こちらの病院で受け付けてもらえず、あちらの病院では断られ、

病院をたらい回しにされたあげく死亡しました。


それが契機となり、2度と同じような悲劇が起こらないよう、ホットラインの電話が設けられるようになりました。


その事件の発端は、1本のホットラインでした。あれは名古屋集中豪雨があった2001年のことです。

当時、総合病院には救命救急センターがあり、そこへときどきホットラインが、入ることもあるそうです。

ホットラインで連続をとるような場合は、救急車に乗っている救急隊員が、

前もって判断して小さな病院には、はじめから電話は致しません。


もちろん、救命救急センターのない小規模な病院にはこの電話器は置かれていません。


医者が当直医の当番をしていた夜の事です。

その日は夜の外来患者も救急車の出入りもなく、割りと静かな夜だったそうです。


突然ホットラインが鳴り、こちらに向かっている救急隊員の電話説明で、患者さんの概要がわかりました。

危険運転に交通事故

高速道路を走っていた乗用車の運転手が、ハンドル操作を誤り中央分離帯にぶつかった。

車は宙に舞い回転してひっくり返って路上に落ちた


乗っていたのは大学生男女3名で、車からなげだされ路上へ落ちた。

そのなかでも損傷のもっとも酷い女の子を乗せて、こちらに向かっていると言うことでした。


その女の子は脈拍、呼吸がともにふれない状態で、

救急車の中ではアンビューバックをあてながら、心肺蘇生術が続けられているとのことでした。

病院の外で待ち構えていた当直医の目の前に救急車が到着したのが午前3時


酷い脳漿を確認し、頭蓋骨が擦れた音も聞いたそうです。


急いで運び込んだ集中治療室で懸命に蘇生努力を続けていましたが、女の子は亡くなりました。


死亡診定が、午前3時45分です。来診時心肺停止状態でした。

この事実関係の裏に、奇妙な現象が起こっていたのです。


その事故から数日後


ひとりで彼は、病院へ行きました。彼は循環器系内科へ案内された。


あの夜、当直だった医師を訪ねて、死亡した女の子の恋人だと名乗りました。


彼は医師に言いました。

「彼女が死んだのは、正確に何時だったのでしょうか?」


午前2時23分と医師は、言ったそうです。


医師が集中治療室で死亡診定したのは、午前3時45分でした。


しかし死亡診定時刻は、医師が「患者さんは死者となった」

こう宣言した時刻であって実際の死亡時刻とは、すこし意味合いが違います。


警察関係者によれば、大破した車のダッシュボードには時計があり、午前2時23分を指して止まっていたそうです。

そして亡くなった女の子がはめていた腕時計も、午前2時23分を指したまま止まっていた。

一方、救急隊員が現場に到着した時には、すでに彼女の心臓の鼓動は、停止していました。


そこで警察側は、彼女はほぼ即死に近い状態だったとみて死亡したのは、午前2時23分と推定しました。
午前2時23分
これが死亡推定時刻です。

彼は言いました。

「そんなはずがありません。俺は、彼女とその時間
電話してるんです」


それは長電話で、午前2時ごろから3時すぎまで、ほぼ1時間にわたり深夜番組をみながら話し続けたそうです。


医師が言うには、死亡推定時刻は、まずまちがいないだろう。

救急車が到着した午前3時からは、医師も彼女をみているといった。

それでも彼は、その同じ時間に彼女と電話してたと言いました。

「電話中に1度だけ雑音が入り、いったん電話がつながらなくなりました。

正確に時間はわかりませんが、たぶん事故にあったその頃だと思う。

すぐに電話は元通りになって、話しを続けました」


通話は無事再開されたらしいのですが、その女の子は既に死んでいる時間なのです。

電話が中断した後は、女の子はおとなしくなり、普通に話していたのに突然悲鳴をあげたそうです。


それからはときどき妙な台詞が飛び出して来るようになったそうです。

「綺麗なお花畑があるよ。ひとりぼっちは嫌だよね?ごめんね。

お医者さんがきちゃった 今までありがとう
とても楽しかったよ。」


そんな言葉を最後に電話は切られ、電話をおいた彼が部屋の時計をみたら、3時10分を示していたといいました。


それからまた数日後のこと今度は亡くなった女の子の母親が病院へ訪ねて来たそうです。


医師は彼の話しました

女の子の母親の話しによりますと、事故の日の翌日、あの彼の両親がお悔やみを言いに来たそうです。


両親は息子から聞いた不思議な話しを語ったそうです。

事故にあった時刻は、彼の母親はまだ起きていて、息子は部屋で長電話しているようだと気付いていたそうです。


女の子は彼とずっと話し続けていたかったのでしょう。

高速道路の事故現場からは壊れた携帯電話が発見されそれが、女の子のものだと確認されています。


疑問に感じた医師は、警察を通して電話会社の通話記録を調べてもらったそうです。

もちろん電話会社は、顧客のプライバシーを守る義務があり通常は通話記録など明かしてはくれません。

しかし、それが事件性のある問題となった場合は別なのです。

事件性という話しを持ち出して、なんとか調べてもらったそうです。

通話記録は

02時10分~03時9分と残っていたそうです。