ネットオークションで『何か掘り出し物でもナイかな?』と軽い気持ちで色々探していました。

すると3000円で、国鉄時代の『○○⇔○○』と書かれた、行き先案内のプレートが出品されていました。

電車の横面に付いてるヤツですね。

特に電車オタクって訳でもなく、特別思い入れのある路線でもないし、

むしろ薄汚れていて、今思うとナゼそんな物に惹かれたのか分かりません。

しかしその時は妙にそのプレートが気になり、気付いたら入札していました。

そんな品ですから、他に入札者が居るはずも無く、簡単に落札してしまいました。

手続きも終わり数日後には手元に送られて来た、そのプレートを見た時、特に嬉しさが込み上げる訳でもなく、

かと言って不気味な雰囲気が漂っているって訳でもありませんでした。

『何故こんな物を買ってしまったんだろ?』

と不思議に思った事を覚えてます。

しかし買ってしまったものは仕方ありません。

しまって置いても勿体無いので、部屋の扉の上に飾っておきました。


異変はすぐその晩から起き始めました。

寝ていると、何かの音で急に目が覚めました。

『……ォ……』

普段一度寝ると、そうそう朝まで起きる事の無いタイプだったので、
『珍しいな…』
と思いつつ何時か気になり、枕元にある置き時計に目をやりました。

この置き時計はアナログ式でした。

文字盤に寝ぼけまなこで目をやったその時、目を疑いました。

1、2、3と数字が書かれている内側に、男の人の顔があるのです。

額から血を流し恨めしそうにコッチを見ているのです。


人間、不思議な物、理解出来ない物を目撃した時って固まってしまうんですね。

その固まっている間、色んな事を瞬時に考えました。

何かが反射している?
自分の顔が映っている?
そもそも文字盤が、そういう絵だった?

などなど半パニックになりながら考えましたが、どれも納得いく答えにはたどり着けませんでした。

そこで初めて『心霊現象』 と言う文字が頭をよぎり、急に怖くなり布団に潜り込みました。

するとまたあの音が…

『……ォ……』

『プ……ォ………』

段々ハッキリ聞こえてきました。

『プ……ォ……』

『プ……オー……』



『プオーー!』

と…

そうです。あのSLの汽笛に良く似た音なのです。

て言いますか、汽笛に間違いないと思います。

その音は、ドンドン近付い来ます。
しかし何もする事が出来ないので、布団の中で耳を塞ぎ、早くこの現象が収まるのを必死に願っていました。

しかし収まるどころか、益々近付き、その音の主は部屋の中にいるのでは?

と思える位すぐ真横まで近付いて来ました。

『このまま踏みつぶされるのか!?』

と覚悟を決めた次の瞬間、辺りは何事も無かったかの様に静寂に包まれました。

その後暫くは身動きとれず、固まっていましたが、

少し落ち着いて来たので意を決し布団から顔を出してみる事にしました。

するとそこには何も無く、いつもの見慣れた自室があるだけでした。

ふぅ~…と安堵の溜め息を吐いたその時、先程の時計が気になり恐る恐るまたあの時計を見ました。

そこには、先程あった顔は無く、静かに時を刻む無機質な機械があるだけでした。

時計の針は『6時』を少し過ぎた辺りを指していました。

『あぁ…もう6時か…そろそろ起きなくては…』
と思った瞬間、異変に気付きました。

おかしい…
そんな訳ない…



なんで6時なのに、こんなに真っ暗なんだ?!

そうなんです。
普段なら6時と言えば、空も白ばんで、カラスも鳴き始める季節。

なのに、あたかも丑三つ時の様な暗さ。

これはおかしいと、ブラインドを上げたままの、ベランダに続く壁一面程ある窓に目をやりました。

するとそこで見てしまったのです。

その大きい窓ガラス一杯に映し出された、額から血を流したあの男の巨大な顔を……


顔、汽笛、プレートの関連性は定かではありませんが、

すぐさまそのプレートをまたオークションに出品したのは言うまでもありません。

あのプレートはきっと今でも持ち主にイタズラをしているものと思われます。

自分でお祓いに持って行け!などと責めないで下さい。
あの時は冷静さを失い、オークションに出す以外考え付かなかったのです…
ゴメンナサイ

皆さんも初めて心霊体験をすれば、分かって頂けると思います。

皆さん、オークションに出品されている物には充分気を付けて下さいね。