私が小学生だった時の話。


1学期に一回、クラス内で模擬店をやる時間があった。


小学生にとっては、お店屋さんごっこをさせられる時間でしかなかったが、

他クラスが勉強をしているときに遊んでいる気持ちになれので、私は好きだった。


あるとき、お菓子屋さんになった私は誰よりもはやく売り切れ状態になった。


売る側でなく買う側になろうと思ったが、残念ながら買いたいものはなかった。


いいものは大方、始まってすぐに売れてしまうのだ。


やることがなくなった私は、教室を見回した。


するとどういうことが、授業中だというのに担任の姿がない。

担任に告げ口しそうなクラスメイトも、買い物や店子役に夢中になっていた。


私は少しの罪悪感と冒険心と共に、教室を出ることにした。


授業中だったので廊下には誰もいなかった。


だが校舎を出るほどの勇気は無かったので、私は屋上を目指した。


しかし残念ながら屋上へは出られなかった。


扉に鍵がかかっていたのだ。


屋上へ出られないよう掛かっていた鍵に疑問はなかったが、私は扉に驚いた。


真っ赤だったのだ。


鮮血のように毒々しい赤い扉に怯みつつ、私は何となく扉にもたれた。


そのとき、扉を挟んだ向こう側から声が聞こえてきた。


それはアニメの魔女のような

「いーっひっひっひっひ」という

甲高い笑い声だった。


今なら笑い飛ばせるだろう。


しかし当時の私は純真な小学生だったので

その笑い声に恐怖し、教室に逃げ帰った。


私が戻るや、同じく完売したクラスメイトが私に話しかけてきた。


恐怖を薄めるために、私は彼女についさっき

屋上の扉の前できいた笑い声のことを話したが、

「そんなことあるわけない」と彼女は信じてくれない。


意地になった私は彼女を連れて屋上の扉に戻った。


しかし、扉は赤くなかった。


廊下の壁と同じクリーム色に変わっていたのだ。


もちろん笑い声も聞こえない。


それから小学校を卒業するまで何度も屋上に向かったが、

赤い扉を見ることはなかった。