私は里帰りで

両親と兄と妹と一緒に

青森県に行ってきました


実家は結構な田舎で見渡せば

田んぼ、海、山ぐらいしかない所でした


数日は自分で持ってきた暇つぶしグッズで

どうにか持ちこたえてたんですけど

流石に飽きてきて

兄弟で一緒に実家の周りを探索する事にしました


・・・40分ぐらい道なりに歩いてはみたんですが

道先を見てもただ田んぼが広がっているだけで

何にも面白くない


とりあえず引き返そうかと兄弟で話していました


適当にぶらぶらしながら道を引き返していると

農作業を終えたお爺さんがこっちによってきました


わけのわからない私たちにお爺さんは真剣な顔で


「今日は来るからもう帰り

(多分こんな意味訛ってて聞き取りにくかった)」


といってきました。


来る?何が?


わけのわからない私はお爺さんに


「何が来るんですか?」


と聞いてみると


「あんたら都会の方から来たね。

あんたらみたいのが一番狙われやすいんだ」


的な事を言ってきました。


はぁ?みたいな気分でも

話しろくに聞いてくれないので

兄弟でぶつぶつ言いながら

道を引き返していきました


日も暮れてきて

空は綺麗な茜色をしていました


後10分程度で

実家の方につくというときに

妙な寒気を感じました


それと同時に隣にいた兄の様子が

妙な事になってきていました


首だけ後ろを向いたまま

足は前を進んでいたのですが

首がガクガクと揺れていて

足取りも妙な感じです


後ろにいた妹が兄の顔を見たのか


「・・・Y(兄の名前)?

M(私の名前)!!Yがおかしいよ!!」


とりあえず妹を私の前にやって

兄の様子を聞くと


「何処見てんのがわかんない!!

黒目の位置が両目で違う!!」


妹もよっぽど怖いのか

ガクガク震えて泣いていました


気をとられているうちに

寒気はいっそう近くに感じました


私は決死の覚悟で後ろを振り向いてみると


目が悪いのではっきりとは見えなかったんですが

なにか白い物体・・・


人?


両手を上に上げて

人間なら曲がるはずの無い部分まで

グネグネと動かしながら

歩いてるわけではないのに

多分こっちに近づいていました


遠近感がうまくとれず

どの程度後ろにいるのかは分からなかったんですが


とりあえずそのとき

無茶苦茶になった頭の中で分かった事は

アレはヤバイってことと

アレはこっちに近づいてきてるってことでした


横に目をやると兄の横顔が見えました


目は何処を見てるか分からないし

口は全開で涎をダラダラ流しながら

何かをブツブツ言っていました


とりあえずまだアレを見ていない妹に


「Yは私がどうにかするから

振り向かないで走って家に先に帰ってて!!」


妹は


「後ろに何がいるの?Yは?!」


とりあえず私が無事だったのは

目が悪かったせいだと思いますが

他の二人は普通に目がいいので

妹も後ろを見れば

きっと兄の二の舞になると思いました


「いいから!!

絶対振り向いちゃ駄目だよ!!

先に言って母達にこのことを伝えて!!」


よっぽど必死な顔をしてたのか分からないけど

妹は頷きもせずに猛ダッシュで

私から遠ざかっていきました


私は兄の腕を掴むと

とりあえず出来る限りの速さで走りました


無我夢中で後ろからの寒気は

どんどん近づいています


あと数百メートルで家だというとき

兄は狂ったように暴れながら

私の腕を振り解いて

後ろ走りのまま私を追い抜いて

家の方へ向かっていきました


1人になって物凄い恐怖を感じて

それでも我武者羅に

家に向かって走っていきました


振り向いてはいないけど

もうアレはもう私の10数メートル後ろに

近づいてきていたような気がします


目の前に家が見えてきました。


兄の姿は無かったけど

ドアが開いていたので

とりあえず駆け込んで

前を見ないように

急いでドアを閉めて鍵をかけました


息切れして玄関に座り込んで

安堵している私の呼吸は止まりそうになりました


ドアを挟んだ外からは

まだアレの気配がするのです


とても近くにいて

もうだめだそう思ったときに

母がやってきて放心状態の私の手を掴んで

居間の方に運びました


「M?M!?平気?大丈夫か?!」


両親と親戚の声がしました


うつろな目でみんなの顔を見ていると・・・・

兄の姿はありませんでした


息切れして汗びっしょりになりながら


「ねぇ・・・Y・・は?」


一瞬間があいてから

私はそれでも周りに尋ねました


「ねぇ私より・・先に・・走っていったんだけど・・Yは?」


両親は多分泣いていました。


親戚達は一呼吸おいてから


「もう少し夜がふけたら探しに行くから

Mは心配しないで休んでな」


といっていました。


手を引っ張られながら

布団の引いてある部屋に行くと

妹が横で寝ていました


となりには兄の分であろう布団も引いてありました


兄は・・?


考えたくても意識は薄れていってしまって

気がつくと朝になっていました


それでもまだ兄の姿はありませんでした


妹はまだ横で寝ています


親戚はいなくて母だけが

居間でポツンとしていました


「母・・Yは?」


母は振り向かないで


「見つかったよ。今病院に連れてってる」


兄はある山のふもとに倒れていたそうです


そこの山からここまでは

結構な距離があるのですが

近所に人が見つけたそうです


兄は精神不安定という事で

数週間青森の方の病院にお世話になりました


私はお見舞いに行かせてもらえなかったのですが

数日はあの狂った状態で

そのあと数日は寝込んでしまい

そして精神は安定しました


そして土曜日に帰ってきましたが

あの時の事は一切覚えていないそうです


アレについて母に聞いても

親戚に聞いても誰も教えてくれませんでした


これが噂の『くねくね』なのでしょうか?