25年前、北陸へ旅行に行った。


車で越前海岸を走っていたが、あいにく快晴とは言えない天気のため、

そして前日に宿泊した旅館で夕食に出たカニを食い過ぎたせいか、

俺も彼女も体調不良で、海を見てもきれいだねという

言葉も出ないような状況で車を走らせていた。


しかも、3台前を走っている

マイクロバスがノロノロ運転しているせいでスピードも出ないし、

何というか調子が出ないとでも言うのか、

ストレスを抱えたまま走っている感じだった。


せっかくの夏の旅行なのになー。


そんなことを思っていた時、彼女が一言。


「ごめん、ちょっとそこに寄って」


海岸沿いにある土産物屋の駐車場に、

ほったて小屋のように建てられていたトイレに寄って欲しい、と。


そうだね、少し気分を変えよう、

ということで、トイレ休憩を取った。


ついでに隣にある土産物屋をぶらついて店から出てきた時だった。


・・・雷?


なんか、ズ~ンとした、腹にひびくような感じがした。


何だろう?

とか思いながら車に乗り込んで、

地図を確認してからいざ走り出そうとすると。


急に道路が混み出しているではないか。


おいおい、事故かぁ?


勘弁してくれよ~、せっかくの夏の旅行なんだぞー?


・・・その数日後だった。


越前海岸での崩落事故で、マイクロバスが完全に巻き込まれ、

乗っていた全員が死亡する、という事故の惨状を聞いて、俺は凍り付いた。


あのとき3台前を走っていたマイクロバス。


ズ~ンという、落雷のようなひびくように感じた音。


あの時、彼女が「そこに寄って」と言っていなければ、

俺は今この世にいなかったのかもしれない。


今は俺の女房になっている彼女に、あの時ほど感謝したことはなかった。