俺が高校の頃の話。


当時俺の友人で演劇部のやつが居たんだけど

そいつが部員数人と舞台公演で少し遠くに遠征に行ったんだわ。


それで一日目は特に予定もなく自由時間だったんで

友人は一度ホテルの部屋に着替えとかの荷物を置いて

部員の仲間と街を観光しにいった。


それで一通り遊びまわったら、

やがて日も沈んできたらしくて

明日の準備もあるし、

いい加減ホテルに帰るかってことになった。


ホテルに到着して自分の部屋(洋室)の鍵を開け

中に入ると、まず妙にジメジメした

蒸し暑い感じの空気が気になったらしい。


1回目に入った時はそんなことなかったそうだが。


その時は秋で外は涼しかったし

普通には考えられないことだ。


で、


「気持ち悪りぃなぁ…エアコンねーのかよ」


と部屋が一緒の仲間に

愚痴りながらベッドに行くと

荷物やベッドの上に夥しい量の長い髪の毛が…。


そして荷物は少し湿っていて、

明日着るはずの私服は濡れていた。


驚いた(というか気持ち悪くなった)友人は

その髪の毛を恐る恐る持って

(ティッシュで摘んで持っていったらしい)

部屋のバスルームに捨てに行ったら

…そこにも大量の長い髪の毛が…。


幽霊を信じるその友人は

本気で気持ち悪くなり嫌がったらしいが

反対に部屋が一緒になった部員仲間は幽霊信じない派。


仲間が


「ただのイタズラだろ」


とか強引にまとめて

友人をなだめたんだそうだ。


ホテルの従業員にそんなことを言うのも

なんだか気が引けたそうで、

結局誰にも言わないまま夜を迎えた。


夜の0時頃、友人は寝る前にシャワーを浴びていたそうだ。


頭を洗いながら

今日の出来事を忘れようと必死になっていると

部屋のドアを誰かがノックする音がする。


「コンコンコン」


何となく嫌な予感はしたものの

友人は軽く身体を拭いてドアを開けた。


…誰もいない。


ただ薄暗い廊下が続いてるだけ。


人が去った気配もない。


その時一緒に部屋に居た友人は

とっくに寝てしまっていたそうで

わざわざ起こすわけにもいかないし、

第一幽霊を信じていない彼に話しても


「気のせいだろ。そんなことで起こすな」


とか言われるのは目に見えている。


仕方なくもう一度風呂に入り直そうとして

バスルームに入ると…


「コンコンコン」


今度はバスルームのドアを叩く音がした。


冷や汗を垂らしながらドアを開けてもやはり誰もいない…。


すっかり気が滅入って疲れ果ててしまった友人は

ベッドに倒れこんで寝てしまった。


気が付くとまだ真夜中。


時間を確認しようと

携帯へ手を伸ばそうとしたが

…体が動かない。


金縛りにあったように身動きがとれないでいると


「コンコンコン」


またしてもドアをノックする音。


一気に血の気が引いた友人は

そのまま目をギュッと瞑って

事が治まるのを待った。


その時体が動かないまでも

声が出ることを確認した友人は

横で寝てる仲間を起こそうと声をかけた


「おい!起きろ!」

「ちょっと!目ぇ覚ませって!」


だがその仲間は一向に目を覚まさない。


それどころか息遣いすら感じない。


まるで死体のようにピクリとも動かず寝息も聞こえない。


「なあ…一体どうしたんだよ…」


そう話しかけ続けていると、

視界の横に白いものがよぎった。


ふと視線を移動させると…

黒く長い髪に白い服を着た女が

こっちを悲しげに見つめていた。


明らかにこの世の者じゃない顔付きと雰囲気。


友人はそこで気を失ったらしい。


次の日会場へ向かい荷物を控え室に置いて

軽くウォーミングアップや準備をして

帰ってくるとまたしても荷物に大量の髪の毛が…


そんなことがあって演劇の舞台で彼はボロボロ。


演技に身が入らず全く力を出せないまま終わった。



と、そんなことを学校で聞かされた俺。


「多分俺に惚れた女幽霊が着いてきたんじゃねーの?」


と友人は笑いながら冗談めかしていた。


俺も半信半疑で聞いていたが

笑いながら話す彼の肩に、黒く長い髪の毛が

まとわりついていたのを見て背筋が凍りついた。

(友人はその時ベリーショートヘアだった)