聞いた話ね。


ある若者たちが深夜の廃校へ肝試しに向かった。


ところが、いざ現場についてみると

そのあまりにも不気味な雰囲気に圧倒されて

みんな怖気づいてしまう。


その様子を見て、

一番威勢の良い若者が

憤慨したようにこう言った。


「なんだよおまえら、だらしないな。

これしきのことで」


これを聞き、バカにされたと思った他の仲間たちは、


「そんなことを言うのなら、

お前一人で入ってみろよ」


などと言ってその若者をけしかける。


するとその若者は、


「じゃあ、あの一番上の階の窓から手を振ってやるよ。

よく見てろよ」


と言うやいなや学校の中へと駆け込んでいった。


しばらくすると、若者が言っていた窓から

一本の手が差し出された。


その手は仲間たちに向けて

ゆっくりと振られている。


「あいつ、すげーな。口だけかと思ったら、

ホントにあんな所にまで行きやがったよ」


彼らは舌を巻き、口々に仲間の勇気を称えた。


しばらくすると手は引っ込み、

校舎の中から若者が戻ってきた。


ところが、なぜかその若者は浮かない顔をしている。


いったいどうしたのだろう?


仲間たちは問いただす。


すると彼は、こう答えたのだ。


「いや、ホントにごめん。

やっぱリ怖くて上まで行けなかったんだよ」


では、いったいさっきの手は・・・


そう思って彼らがもう一度校舎の方を見ると、

校舎の窓という窓から無数の手が差し出され、

彼らに向かってゆっくりと振られていた。